建築コラム|デザイン住宅は東京の田口知子建築設計事務所

田口知子建築設計事務所

建築コラム

2014/12/03 MASセミナーのお知らせ

今年ももう12月に入り、年末のあわただしい気持ちになってきました。寒さも厳しくなってきましたが、お元気にお過ごしでしょうか?
さて、今日は日本建築家協会(JIA)港地域会が開催します「MASセミナー」のお知らせです。

チラシPDFダウンロードはこちら

内容は、身近な生活の中にある気づき、問題意識、をトピックして、複数の建築家がそれぞれの視点でスライドをまじえてお話ししていきます。その後に、皆様のご感想、ご意見を伺いながら、テーマについての多面的な議論が展開していければと期待しています。

 今回のテーマは「癒され元気になる建築・街とは何か」です。ストレスの高い現代社会において、人を癒すことは健康に生きていくためにとても大切な質だと思います。
同時に、ストレスの原因はさまざまな関係性や出来事によって形成され、癒しもまた認識の世界に多くの原因を持つ、繊細でうつろいやすいものです。そんな中で、形のある建築や環境の中に人を癒す力 を持つことができるか?もし可能ならそれはどのような質によるものか、ということを考えてみたいと思います。

メンバーのコメント一覧PDF

このセミナーは、まちや建築、社会のあり方などに興味のある方ならどなたでも参加できる開かれたセミナーです。終わった後に簡単な懇親会もあります。あわせて、ぜひお気軽にご参加ください。

テーマ:「癒され元気になる建築・街とは何か」
日時:12/13(土) 14時~16時
      懇親会:16時~17時半まで
    (同会場で簡単な懇親会を行います)

場所:日本建築家協会 JIA館1階 建築家クラブ
    渋谷区神宮前2-3-18
お申込み・詳しくはこちらHPご覧ください。→  http://www.jia-minato.jp/



2014/11/26 Steps~お住まいになってからの写真撮影

先週は、9月に竣工した雪谷大塚の集合住宅「steps」のお引っ越し後3か月たっての撮影をさせていただきました。カメラマンはナカサアンドパートナーズの藤井さん。


庭の緑や冬の低い日差しが家の中に入ってくる様子はおだやかな初冬の光が美しく、1階でありながら、外に開かれた空間を感じました。小さなガーデンテラスに植えたシンボルツリーの存在は大切だと思いました。


それにしても、今回撮影したお宅の方は、生活を楽しくデザインする方たちで、竣工直後の空間よりもずっと素敵な住まいに成長していました。そのような空間を撮影するのはとても幸せな体験です。







建築家は抽象的な思考でつくる傾向がありますが、建築単体が語る言葉よりも具体的な生活に伴って生まれる空間のほうが、生き生きとして、ダイナミズムを感じられるのが好きです。 光と風、自然と人との関係をつむぐ、建築のあり方を考えて形にする仕事は、学ぶことが尽きない奥深い仕事だと思います。

撮影にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。



2014/11/08 キッズタウン東十条保育園フェスタ~一日美術館

今日は、2011年に私たちの事務所で設計した「キッズタウン東十条」開催のフェスタに行って来ました。

今日は、地域の人たちに保育園を解放し、保育室のなかに園児の作品を展示して、みなさんに見ていただく、というオープン保育園のイベントです。

もう4回目を迎え、地域にすっかりなじんでいる感じの「キッズタウン東十条保育園」。園長先生のご指導のもと、保育士さんたち皆が協力して本当にしっかりとした運営がされている保育園です。特に、地域の住民の皆様への開かれたホスピタリティーが抜群だと感じます。
七夕祭りや秋の美術館フェスタ、運動会等、近隣の住民のみなさんをお招きして一緒になって企画を行っておられます。



美術作品は、すべて園児の名前が入った作品です。0才児から作品作りに参加していて自由に描いた線や手型足型のスタンプも、保育士さんの手にかかって、物語のある作品に仕上がっています。どんなささいな表現も応援されて、アート作品になってしまう、というのびのびした教育は、子供にとって創造性を育む素敵な環境だと思います。「想像したものをかたちにする力、創造力は、生きる力なると思うのです」とおっしゃる園長先生の思想には本当に共感します。そして保育士さんのみなさんのクリエイティブな力も素晴らしい。

 夕方からは保育士さんが町内会やJRの方をご招待して盛大に宴会です。

今年は保育士のグループによるエイサー(沖縄の伝統芸能)や三線の演奏もご披露いただき、楽しいひとときを過ごしました。

暖かい空気にあふれたこの場所に来ると、いつも、クリアなやさしい気持ちになれるのがうれしいです。
みなさん、今日はお疲れ様でした。そして本当にいつもありがとうございます。




2014/10/15 LED照明の進化と調光機能の問題点。

建築のLED照明の照明器具の進化は目覚ましいものがあります。光の演色性、という意味で、白熱灯に近い色温度や拡散性、今までの照明器具の機能に引けを取らない性能を獲得しています。特に目覚ましいのは、調光機能。生活空間では、光の明るさの調整を行うことは、心理的に落ち着きを与える効果が高く、リビング、ダイニング、寝室など、リラックスする空間には、いつも調光機能をもたせるのがよいと考えています。

そんなLED照明の進化の中で、過渡期に特有の問題も発生しています。それは、照明器具と調光スイッチの関係に、メーカー相互に組み合わせの不適合が存在するということです。今までふつうに使っていた調光器は、基本的には「白熱灯」の調光器だったので、照明器具のメーカーを限定することはありませんでした。しかし連続調光するLEDは、まず白熱灯用の調光スイッチをそのまま使うことはできません。 適合しない調光器を使ってしまうと、照明器具の光が複雑に点滅し不快な状況になってしまうようです。またLED専用調光器だからといって、どんなLED照明にも使えるわけではありません。照明器具の種類、メーカーが異なると適合しないケースも多々あることが最近の現場でわかりました。

 パナソニック+コイズミのLED調光器は、互換性があるようですが、オーデリック製の照明には、コイズミのスイッチは×。ルートロンの調光器には、オーデリック、ヤマギワ、コイズミの一部の機種は使えるがダイコーとパナソニックは×。JIMBO製の調光スイッチは白熱灯しか使えない、というように、スイッチと照明の適合性は機種とメーカーによってさまざまに不適合を発生することを発見しました。


ルートロンの調光器は、多種メーカーに対応していますが、機種、メーカーによっては適合しないこも・・

神保電気のスイッチ。デザインは美しいのですがまだLEDには非対応です。

スイッチも照明もすべてを同じメーカーで統一しておけば問題は起きないのでしょうが、最近の物件で、スイッチのデザインにこだわる方がおられ、LED照明に別のメーカーのスイッチをつけるケースがありました。すると照明と調光器の適合を確認しない、という現象が起き、手直し工事が発生してしまいました。LEDの調光は位相制御型というそうですが、LED同士ならメーカーを横断して方式はぜひ統一してほしいものです・・。

設計、施工関係のみなさん、選定の際にはぜひ気をつけましょう。
そして、やはりLEDはだいぶ良くなったのですが、白熱灯の光はやわらかく、美しいなあと・・。うまく使い分けて、共存させたほうがよいと思います。




2014/09/11 Timberize TOKYO 2020 展覧会開催中です。

「都市木造が2020年の東京を未来へつなげる」

今、青山のSPIRAL で「Timberize TOKYO 2020 」展覧会を開催中です。

PDFチラシダウンロードはこちらから

都市木造を普及させるための活動をしているTeam Timberize の展覧会です。さまざまな大学や建築家が参加して、2020のオリンピック施設を木造でデザインしたら?など、木造建築の魅力や可能性を広げる、パワフルで楽しい展覧会になっています。自分も、実作100の模型展の1角に、設計中の木造の集合住宅の模型を展示させてもらいました。

 木造というと、戸建て住宅や小さな建築しか思い浮かばない方も多いと思いますが、ヨーロッパでは大型集合住宅が木造でどんどん建てられ、耐震性、耐久性に、耐火性能も、RCの建築にひけをとらない建築が次々建てられています。
 石油資源の枯渇や地球温暖化が問題視される昨今、Co2排出量がゼロ、循環資源である木造の価値は、どんどん上がっているのです。森林大国 日本としては、木造をもっと身近に、大型建築でも、実現することができるなら、未来を開かれる感じがします。
 設計をしていて思うのは、木造とRC、鉄骨造では、内部空間の質が、何か変わる感じがします。人にやさしい、という言葉ではなんだかうまく伝えられないのですが、疲れ方が違う、深呼吸したくなる、やわらかな感じ。弱っている人が恢復する、成長する空間というのは、木造の建築がよいなあ、と最近思います。

 一方、木は、水で腐ったり、アリに食われたり、燃えたり、ねじれたり、乾燥して割れたり、いろいろ動きます。しかし、そういう不確定な材料だからこその良さもある。傷んだらそこだけ取り替えて、継ぎ足して、塗装して、というそういう人に近い材料の価値とはなんだろう?再考してみませんか?



2014/07/15 建築セミナーのお知らせ

今日は日本建築家協会 港地域会の企画するセミナーのお知らせです。

セミナーテーマ:「日本の町並みはなぜ美しくないのか」
日時:7/26(土) 14時~15時半
      懇親会:15時半~17時まで
    (同会場で簡単な懇親会を行います)

場所:日本建築家協会 JIA館1階 建築家クラブ
    渋谷区神宮前2-3-18
詳しくはこちら→ http://www.jia-minato.jp/

今回のタイトルはこのセミナーで通して考えてきたテーマです。あらためて日本の町並みの成り立ちにスポットをあて、町を美しくするものは何かについて考えていきます。

こじんまりとした会場ですので、会場のみなさんにも一緒に考えていただき、ご意見をいただきながら議論を深めるることができたらと思っています。

参加費無料で、どなたでも参加いただけます。
終わった後、同会場でワインとおつまみで、簡単な懇親会も用意しています。
お時間がありましたら、懇親会にもぜひお気軽にお立ち寄りください。



2014/06/14 「太子堂のサーカス」公演のお知らせ

私たちの事務所で設計監理して2009年に完成した、Trapezium という住宅の地下1階が、「sancha teatretto」というミニホール兼ギャラリーとしてオープンします。
最初の公演はタテヨコ企画さんの「太子堂のサーカス」というオリジナルな書下ろしの演劇作品です。主宰の横田修氏は、小さなギャラリーなどで、その場所に触発されて作るオリジナルな作品を作られていて、私も何年か前、同氏の演劇を、GalarieKATAK.KATAK という住宅街の中の小さなギャラリーで見たことがあります。日常に近い親密さと、非日常な演劇という体験がパラレルに存在する空間がとても新鮮で楽しい作品でした。

今回オープンされる「sancha teatretto」という空間では、どんな作品が生まれたのか、今からとても楽しみにしています。 6年前の設計当初から、私はこの日を楽しみにしていました。町に開かれたホールを持つ「家」を建てることがこの家づくりのテーマだったからです。それが実現したことが本当にうれしく、わくわくしています。

前売り券発売中です。ご興味のある方は、ぜひ公演に足を運んでみてください。






2014/01/15 神秘な巨大地下空間~大谷石の採掘場跡

今週月曜日、スタッフと一緒に宇都宮の敷地調査に行った帰り、大谷資料館に立ち寄ってきました。
資料館は、大谷石の地下採掘場に連続していて、2万㎡にも上る30mの深さの巨大地下空間が見学できます。

以前から行きたいと思っていたのですが、初めて実物を見て、その巨大なスケールと神秘的な空間に圧倒されました。

だれがデザインしたわけでもないのに絶妙なバランスで立体的に連続する空間は、大谷石の掘削における構造的必然から生まれたようです。

面積の1/3を残すように堀りつくされ、残った石の壁とヒューマンスケールを超えた天井の高さがあまりに美しく、畏敬の念を抱かざるを得ません。
ところどころにあけられたトップライトのような穴からわずかに自然光がもれてくる様子や、大谷石のやわらかい質感と色調がこの空間をより際立たせていると感じます。

人間が作った空間ですが、無数の人々の労働の痕跡でもあり、偶然生み出され形の美しさは、建築を超えた絶対的な存在の美しさを持ち、本当に感動しました。




2013/09/07 キッズタウン東十条フェスタ~一日こども美術館

私たちの事務所で2年前に設計監理しました「キッズタウン東十条保育園」で、本日「キッズタウン東十条フェスタ」が開催されました。私もお招きいただき、今年も行ってきました。


保育園の中、いたるところに子供たちが作った絵やおもちゃなど、さまざまな作品が所せましと並んでいました。保護者の方や地域の方にも見ていただけるように、園を解放して様々なイベントを行う恒例の行事です。


この園では、アート作品づくりや、リトミックなどの体育など、のびのびと遊び感覚で創造性を育てる教育がとても熱心に行われていて、さまざまな講師の先生や大学の先生などが定期的にワークショップをやっています。その成果を、こうやって保護者の方や地域の人に見てもらう機会をつくることを、恒例行事としてやっています。園長先生の人柄と人徳がなせる、「開かれた保育園」が完全に根づいています。

子供の作品を、丁寧に作品にして展示するのは、講師の島田さんと保育士さんのクリエイティブな共同作業です。ほほえましくて、元気になります。


階段にはロボットの作品が。完成度が高い。

夜は、地域の方と関係者が集まって、恒例の屋上夜涼み会です。生ビールもサーブしてもらって、三線の演奏や本部長のギターなど、いろいろなアトラクションも飛び出して、屋上ビアガーデンは大盛り上がり。

園長先生と一緒にみんなで踊ったりして。

地域に根付いた保育園は、夜こんなふうに屋上宴会を催していても、まったく苦情もなく、近隣の方に承認されていることがひしひしと伝わってきました。
保育園という場所が、大人にとっても子供にとっても、夢と希望を与えるオアシスのような存在になり、町を潤していく可能性なんだなあ、と思い、「キッズタウン東十条」に来るたびに本当にほのぼのと幸せな気持ちになります。
保育園のみなさん、素敵な一日をありがとうございました。



2013/08/27 府中ソーラータウン~公園の中に住むような分譲住宅

昨日、府中ソーラータウン の見学会に行ってきました。設計は野沢正光氏で、東京都都市整備局が計画した事業です。「長寿命環境配慮住宅モデル事業」として、都の土地を民間に売却し、相羽建設が計画から販売まで行った16戸の分譲住宅です。


町全体をパッシブデザインとすることをコンセプトに、中心に公共性を持ったみんなの街路を計画し、風の道兼住民の共有散策路になっていることがポイント。もちろん住宅は高断熱の創エネ住宅で、太陽光パネルとOMソーラーをすべての屋根に載せています。
 日本で4軒目?のLCCM住宅(低いライフサイクルCO2発生)を取得したとか。電気代は、一般の住宅の12%程度。太陽パネルの発電と、OMソーラーによる100%に近い豊富な給湯量によって、ごくごく低いエネルギーで快適に生活できる住宅になっています。


 今回おもしろいと感じたのは、「地役権」という民法上の権利についてです。分譲住宅は個人の敷地を分割して販売することで所有地が明確であり、道路か個人私有地かに分かれてしまいます。
 しかし、この住宅では「地役権」を使って、分譲時のルールの中で取得土地の1/15は住民の共用部に供する、というルールを唄って販売することで、私有地の中に共有の街路を持つことができているのです。


私有地を共有してできた「園路」と呼ばれる通り抜け路地

 日照、通風、コミュニティーの活動などを行う公的なスペースを生み出すことができるということです。
また、隣地との境界も塀など立てずオープンであることにより、自分の土地だけでなく借景的な中間庭が発生しています。


隣地の間に境界線はありません。見えない境界線は小さなブロックを配置するだけです。

私有地か公共地か、という2者択一ではなく、「シェアする土地」という感覚は分譲地ではなかなか存在しませんが、戸建て住宅の開発としてこういうことを仕掛けることに本当にデベロップメント(土地の再開発)の面白さがあると思いました。



2013/07/16 LIVES 8月号に「3世帯8人家族の家」が掲載されました。

7月13日発売のLIVESに、昨年竣工した「3世帯8人家族の家」 が掲載されました。


「子供と暮らす家」という特集テーマで取り上げられています。この家の作品紹介の後に、「子供と暮らす家のQ&A」という4ページのインタビューも載せていただきました。過去の家づくりで考えてきたアイデアをいろいろしゃべっています。

御両親と姉妹の各世帯が3世帯それぞれ生活空間を持ち、子供書斎と階段、玄関、シャワー、浴室を真ん中の共用部に配置して、3家族のつながりと適度な距離感、プライバシーを両立させた住宅です。

家の前で記念撮影。玄関は120cmの大型引き戸。ガラス梁の向こうは共用の階段室です。

竣工後一年たって取材に同行して、ご家族が本当に楽しそうに、非日常的な遊びごころを満載して暮らしておられる様子をみて、「ああ、こういう暮らしが、子育てする家族や、老夫婦の理想の生活スタイルなのだなあ・・。」と実感しました。
 というのも、姉妹のお子さんはそれぞれ男の子と女の子で仲良しです。二人とも小学生ですが、家に帰ってくると大人がだれか待っていてくれておやつやごはんを用意してくれる安心感。3つの家をぐるぐる回る子供はのびやかで幸せな笑顔をふりまいています。


 共用部にある子供書斎で、2世帯の子供が一緒に勉強します。窓の向こうはお姉さんの世帯のキッチンです。

 姉妹のご家族は、2世帯の間にあるテラスで毎週「外ごはん」を楽しんでおられるそう。パンケーキを一緒に食べたり、バーベキューやベーコンづくりなど、非日常なアウトドアライフを日常化してしまっているのが素敵です。
 お姉さんが明るく、クリエイティブにリーダーシップが発揮する人柄で、家族皆の信頼関係があることが、このような生活が成立するポイントだなあ、とも感じました。家というのは、やはり「人」がつくるもの。器(建築)のできることは限られています。
とはいえ3世帯で住む、というと大きな家に見えますが、延床面積178㎡です。プライベートと共用ゾーンを組み合わせて暮らせるので、プライベートな部分はそれぞれ45㎡程度でも、のびのび暮らせる家作りを低予算で実現することができるが可能になりました。そこは、建築家としての「技」です。

妹さんの生活空間。キッチンとリビング、寝室と子供部屋を立体的に重ねて視線の抜けをデザインしています。


お姉さんの世帯のリビング。奥には2世帯共用のバルコニーがあります。

取材を通して、集まって住むということの魅力と可能性をあらためて再発見した一日でした。こんな素敵なご家族にめぐりあい、設計に携わることができたのは幸せなことでした。

Yさん、Mさん、取材協力ありがとうございました。

photo by:中村晃



2013/07/13 「広い家」と「共同の家」~東京大学新領域の設計課題

今日は、東京大学新領域創成学科の最終講評会でした。非常勤講師として設計を教えています。出題は大野先生・清家先生の出題でタイトルは「広い家・共同の家」というテーマです。


郊外の一戸建て住宅地にスポットを当て、これからの少子高齢化社会を迎える住まいとして、郊外の家を再認識し、共同で生活を支えあうシステムを提案することで、実際の郊外住宅地に新たな住民を呼び込むことができないか、という課題です。 実際に、柏市花野井「柏ビレッジ」に、区画も含め宅地全体を設計しなおす、という課題です。柏ヴィレッジに住まわれている住民も傍聴され、タイムリーのニーズのあるテーマだなあと思います。学生たちの課題発表をとても楽しみにしていました。
設計内容は、だんだんよくなっていましたが、一番問題なのは実体験としての問題意識です。東大生には、現代の郊外住宅地の状況や高齢化した住民の意識にはリアルな接点がないらしく、核家族形態を信頼していて、単なる世代交代の話になってしまう作品が多いのにはびっくりしました。彼ら学生が、おそらく恵まれた明るい家庭環境にいるせいなのかもしれません。
設計課題をやっていると、人の生きている世界によって、見える世界は本当に異なるもので、同じ世代の建築家でもその人の仕事の状況や環境によって見える世界がまったく違うんだなあ、と感じることがよくあります。正しい回答は無いですが、その中でも自分の立ち位置を決めて発言しないといけないのが難しくもおもしろいところでもあります。
私たち講師が試行錯誤しながら講評した後、最後に住民の方がおしゃっていた言葉がとても印象的でした。

「私たちは、みなさんの提案しているようなすばらしい郊外住宅に住んでいますが、ずっと家にいると気がくるってしまう。私たちは非日常なものを求めています。六本木でストレス解消してます。」とか、「今町では、高齢者の独居老人が増えていることが一番の問題なんですよ。それをなんとかしてほしいということ、ここに若い人を呼び戻すアイデアを提案してくれればねえ」といった住民の方の意見は最高だなあ、かなわないな、と思いました。

設計にこういうリアルな意見を聞くことと、同時にゲリラのように、先生の期待や今ある現実を飛び超えて、意外性とパワーのある設計を提案してくれることを学生さんたちに期待しています。

有意義で、とても考えさせられる時間でした。



2013/04/11 木造5階建て「下馬の集合住宅」上棟見学会に行ってきました。

先日曜日の午後、小杉さん、内海さんの建築ユニットKUSの下馬の集合住宅の見学会に行ってきました。


5階建ての耐火木造の集合住宅です。
設計期間は、なんと2004年からで、かれこれ10年月日が経っています。大学自体の研究室の後輩でもある小杉氏がこのプロジェクトについて、OB会でお話しされていたのを聞いたのは5年くらい前だったかしら?いつ建つのですか?と時々経過報告を伺いつつ、いまかいまかと楽しみにしていました。



ついに、建築工事が始まって、上棟、ということで、私も他人事ではなく、うれしくなって、勇んで見学会に参加させてもらいました。ここまで時間がかかったのは、なんといっても、都心で木造5階建て、集合住宅という特殊な要件によるもの。2階から5階までの住空間を木造とし、主要構造部の柱、床、屋根に一時間耐火を取得するため、新たに国土交通省の大臣認定を取得という、壮大な耐火木造の実現実験でもあったからです。

そして、内部空間は、まだ床や屋根の木造が被覆されていない状態で見られました。これが床の断面ね、と素朴に感動します。柱と床の受け材には既製品の金物を使っているそうですが、スマートです。

床や柱はこれから耐火被覆の石膏ボードが貼られてしまいます。


見えるのは、横力を受けるラチス状のブレース。

水平力を伝える随所には、鉄骨の約物を使っていて、スリムに納まっていますが、大変な高技術、高コストの工事であると感じます。(笑)
なぜ、ここまでして木造?という疑問はもっともですが、海外では木造耐火建築はかなり普及しつつあります。
 RCや鉄骨より比重か軽く人の手による工事が可能、木密地でも耐火建築が建設可能、環境負荷(LCCO2)が少ないなど、いろいろな意義があります。
個人の設計事務所で、ここまで新しい試みを実現したということ、長年の努力と情熱に、あらためて感動と尊敬を覚えます。本当に、おめでとうございます。

完成を楽しみにしています。



2013/03/28 木と対話する家具屋さん

青山にある「家具蔵」は、無垢家具の制作販売をしている家具屋さんです。

今リフォームしようと考えているI邸のキッチンを、無垢材のキッチンにしたいという要望があり、クライアントと一緒に家具蔵のショールームに行って打ち合わせをしてきました。



さて、ここの営業部長さんの三上氏は、とてもユニークな方です。無垢の木には、さまざまな樹種がありますが、ひとつひとつの木の性格を、「個性的な人」のように擬人化して紹介してくれます。彼の木に対しての、並々なら愛情のこもった語り口は、ちょっと不思議な世界に引き込まれる体験です。
 「サクラは、とてもお茶目な女の子なんですよ。AKBみたいな感じですかね。ちょっとおっちょこちょいだけれど、さびしがり屋でちやほやされたい。あわてもののところもあって、キュッてのどをつまらせるから導管にこうやって黒いスジが入るんです。」とか。「ナラは昔の日本のお母さん、という感じですかね。すべてを抱擁して動じないですよ。」とか・・。


木の性格を説明される三上氏

   厚く挽いた無垢の板材を見ていると、本当に木の細かい肌理の違い、模様の豊かさを実感するのと、生き物としての個性を感じるのも、楽しいことです。


お茶目だといわれたチェリー。

 木と対話することは、より深く自分の世界の身近にし、愛情が深まることで仕事をより深く楽しむこともでき、良い仕事をすることにもつながるのだと思います。家具蔵の家具は、無垢木の特長を生かしたナチュラルで落ち着いたデザインで、そのクオリティのわりに価格も抑えれられているので「職人気質の良心的なお店ね」と、クライアントのIさんも感心しておられました。
 本質的な部分を大切にする仕事、というのは、働く人もお客様も、両方を幸せにするなあ、と感じました。



2013/03/12 「キッズタウン東十条」が「作品選集2013」に掲載されました。

日本建築学会が主催する、「作品選集2013」に私たちの設計した「キッズタウン東十条保育園」が選抜されました。


 初めて応募しましたが、選抜にあたって審査員の建築家の方が候補作品を現地で確認し、とても丁寧に審査してくだいました。雑誌の紙面や写真だけでは伝わらない、建物のニュアンスは、使われてから1年以上建ったものとして現地を見ることで、その建築の質は確実に評価できるレベルになるのだと思います。そのような選考方法を取る学会の審査の方法に信頼を覚えました。
 選抜されて掲載された100作品を見ると、どれもオリジナリティや造形性、建築的な感性度においてレベルの高い作品で、自分のものがその中に選ばれたことは光栄な気持ちがします。
モノとしての建築の新しさや完成度の高さと、人や社会に影響を与え、幸せにする力、そのどちらの軸を持つかというと、後者のほうに興味が偏っている感がありますが、作品としての建築を作ろうとするクリエイティブな情熱も素晴らしいことだし、自分にはまだまだ足りない部分として鍛錬しなくてはと思います。
 そして、伊東豊雄氏が先週の日経アーキで語っておられた、「作品という概念はもう消えたほうがよい」という言葉にも深く共感すしました。プロセスを重視しつつ、真に社会のニーズをくみ取って対話しつつ、未来に必要とされる建築を作ることのできる建築家というのは、とても興味深いテーマです。作品性への情熱は逆にマイナスに働くかもしれない、ということも受け取めて、考えてみたいと思いました。



2012/10/23 9年経った「Panorama House」 訪問

先日曜の午前中、横浜で9年前に竣工した「Panorama House」 にご訪問してきました。

設計当時の幼稚園生だったお嬢さんも来年高校生。個室をリフォームしようかというご相談も兼ねて、久々にお伺いしました。

 家主のOさんは、生活を大切にされるご夫婦で、庭の敷石もご自分で施工されたり、奥様の趣味でたくさんの植物、バラやコニファーが元気に繁茂していました。新築時には2mくらいだったささやかなヤマボウシの木は、2階の屋根を超えるほど生命力のあふれた姿に成長していました。


家の中は当時とほとんど変わらず、とてもきれいにしまわれていました。  テラスにはブラックコーテッドリトリバーのマリちゃんがくつろいでいました。


黒くて大きいので、ちょっとびっくりしましたが、とてもおだやかで人懐こい犬でした。マリちゃんは、8歳のメスですが、黒くて大きいので、お客さんはすぐ「オス」だと勘違いするそうです。わたしもすぐに「まり君」と呼んでしまいそうになりました。人間というのは、本当に思い込みの強い生き物であるなあ、と実感。 「メスなので性格もおだやかで、よく見るとやさしい顔をしていますよ」とOさん。とてもかわいい犬でした。


「よく朝ごはんを食べます。バーベキューもするんですよ」というパノラマテラス。
10年近く経った家を訪問するのは、設計者として緊張する体験です。生活の歴史も含め、さまざまなお話しを伺うことは、設計の欠点や、素材の特長、問題点などとても現実的な認識に向き合うことになるかたです。


 西日の問題や通風窓の配置などさまざま問題もあり、それは真摯に受け止め、学ばせていただきました。それ以上に、ご家族が生活を大切に、家の手入れをされつつ、幸せそうに住んでくださっている様子を拝見するのは、とても幸せなひとときでした。

10年前のものも、詳細図など手書きスケッチを事務所に保管しています。西日よけを庇に取り付けられるか、という相談にも、図面があれば答えることができます。
 9年を経た図面を見ながら、設計の仕事に新鮮な喜びを覚えました。


中庭のヤマボウシは2階まで成長して日陰をつくっていました。庭の石はご主人様施工。





2012/09/25 風が吹き抜ける家~「玉川学園の家」竣工写真の撮影を行いました。

先週の土曜日、半年前に竣工した「玉川学園の家」の竣工写真の撮影を行いました。

朝早く起きてみると雲が厚く、今にも振出しそうな天気・・。残念。でも、建て主さんの都合やカメラマンの予定を調整するのに1か月以上前からの約束だったので、晴れ間が出るように祈りつつ決行することに。

 玄関先のジューンベリーをはじめ、シルバープリペット、キンシバイがわさわさと成長し、自然風というか、野性味があって、良い感じ(?だと思いますが)です。


北側の玄関アプローチの写真です。

 家に中では、どこに立っていても風が吹いてくる感じの、なんとも言えない心地よさ。

2階の部屋がばらばらに分かれて宙に浮いているような設計で、部屋の隙間の吹き抜けを通って風の抜けが感じられる空間です。


建て主のYさんは、設計当初から「風」にこだわって勉強もされていたので、窓の位置は一緒になって慎重に決めていきました。そんなふうに、何かを期待して設計し、結果を体験するのはとても楽しいことです。


 ちょっと空間が複雑に見えますが、立体的にお互いの存在を確認でき、居場所のある、ユニークな家で、Yさんもとても満足しておられる様子でした。

 午後には、突然青空がのぞき、日差しの感じられる写真も何枚か取ることができて、本当にうれしかったです。


 ダイニングの窓から見える隣の家の樹木が借景になって、とても美しいです。

 建て主のYさん、カメラマンの藤井さん、ありがとうございました。



2012/09/21 スタジオ・ムンバイ展~触れて体験すること

今日は、ずっと見たかったスタジオ・ムンバイ展(ギャラリー間)に、やっと行ってきました。
人も多かったですが、とにかく想像以上の展示方法とその空間にびっくり。ギャラリーの中にいるとは思えない、どこかの製作現場に来てしまったかのようなリアルな創作の息吹を感じる体験でした。


スタジオ・ムンバイはインドで活動するビジョン・ジェイン氏率いる建築集団。


スタジオ・ムンバイ ワークショップのメンバー写真
ワークショップには建築家だけでなく、大工、石工、カラーアーティストなど、その手で現物を作り上げる職人さんも含んだ大集団の建築事務所です。

モックアップで原寸をつくったり、模型を作ったり、その同じ人が現地の工事を行う構造になっていて、インドの生活文化に溶け込みながらデザインし、考え、作り、生活することすべてが、同時に仕事の中に同時存在している建築事務所です。そして、作っている空間が本当に美しく、洗練されていて、自然と調和したものであることは、そのプロセスすべてが影響して作り出しているのだと、納得できるデザインです。



今回の彼らの展示物には「触るな」マークが全くついていない。「触ってOKマーク」「座ってOKマーク」が貼ってあって、来場した人が自由に机に座り、彼らの作った机といすを体験しながら手づくりのデッサンノートや写真集を眺め、現物の素材を確かめることができるようになっていました。まさに、職人の世界の実体験。



スケッチノートは、緻密なディテールのスケッチが大量に表現してありましたが、日本のようにアイデアを生むのノートではなく、重要なコミュニケーションツールなるそうです。インドでは、文字の読めない職人もいるため建築図面では伝わらないことが多く、部分をパースやアクソメに起こして伝えることが効果的だとか。
 形式化された冷たい図面ではなく、人の素直な感性に寄り添った図面表現というものが大切だと思いました。


インドの町の日常風景を動画で流しているコーナーやたくさんの写真に写るインドの生活や自然環境もリアルに感じられる展示です。 インドに行ってきたような、とても親密な空間体験と、創作の喜びを感じて元気をもらって帰ってきました。

展覧会は明日までです。もしまだの方がおられたらお忘れなく!



2012/07/21 「玉川学園の家」半年点検~窓が作る物語

今日、竣工して半年ぶりに「玉川学園の家」をご訪問させていただきました。

道路側からの外観。ジューンベリーがシンボルツリーです。


キンシバイとアジサイが咲いています。 庭の植栽は、どれも元気に、賑やかに成長していました。ちょっと野性味もあっていい感じです。
さて、今日は、リビングの階段の集成材が反り返ってしまったというトラブル解決に来たのでした。本間建設の渡辺さん、大工さんとで原因と対策を検討しました。階段をあけてみると、土間と階段の間に湿気がこもって抜けなくなっていたようで、階段の床板の裏側の含水率25%、表は10%。この差が床板の反りに影響したようです。下地を作り直し、蹴り込みに通気孔をあけて仕上げることにして様子を見ることに。こういう手間のかかることでも丁寧に対応してくれる工務店は、本当にありがたい存在です。


床板をはがしてみました。 こんな不具合もありながら、住まい手のYさんは、半年住んでみての感想についてとてもうれしそうにお話してくれました。


奥様いわく「階段がたくさんあるので、子供がいろいろなところに座って本を読むんですけど、どこにいても本当に楽しいです。冬の雪の日にあの階段に座って、ずっと外を見ていました。ダイニングの高窓も、本当に最高の位置についていて、隣のハナミズキや月が見えることもあるんですよ。」


ダイニングの細長い高窓。この高さと位置は自分としてこだわったところです。隣の家の緑を借景にする計画です。


みんなの書斎でパソコンをいじっているS君。窓の外の緑は玄関のジューンベリー。

 「冬は蓄熱床暖房で、家全体がとても暖かいんです。夏は風通しが抜群だし。快適ですねえ。」と旦那様。
 風の抜けを考えながらデザインしたのですが、南から北ではなく、道路側の北から南に、上から下に風が吹いてくるのがちょっと予想外。風の流れ方について、もう少し勉強すべし・・・。
予想外のことは起きますが、なにはともあれ、住まい手の嬉しそうな言葉を聞くことが自分にとっては最高の喜びです。

工務店さん、Yさん、本当にありがとうございました。



2012/03/05 キッズタウン東十条保育園 竣工して一年がたちました。

今日、キッズタウン東十条に行ってきました。昨年3月の竣工以来、一年がたちました。
初めての卒園記念のパンフレットの中に、建築家の文章を寄稿してください、というありがたいお話をいただき、園の子供たちの様子を拝見しようと、ひさびさにお邪魔したのです。

 夕方4時はお母さんが迎えに来る時刻。1階の玄関は大賑わいです。


 玄関を見下ろす窓には子供がのぞいています。
いつ来ても、この窓から子どもがのぞく姿を見られるので、おなじみの光景。


 階段を大騒ぎで駆け上る子供たち。


0歳児でも上り下りするという、みんなの遊び場でもある階段。

保育園にこんなに階段が多いことは、長年キャリアのある園長先生も初めての建築だったそうですが、この一年、子供たちは誰一人けがをすることもなく、階段が遊び場としてにぎわっているそうです。

ふと見ると、2階の年少さんの幼児室の窓に子供がはまっています。

子供にちょうどいい大きさ、高さで町を眺める窓がいろいろあいているのです。

保育園はオープンして初年度は赤字になるといわれていますが、この保育園は、初年度からかなり黒字になったらしく、経済的な余裕もあってか園長先生はいつも大満足の様子で、子供たちの日々の様子をうれしそうに語ってくださいました。いろいろ追加工事も頼まれて、設計者としては一安心の保育園風景でした。

みなさんに愛されて使いたおされている建築を見るのは、私の一番の幸せです。



2011/12/24 「311:失われた街」展 に行ってきました。 

今日まで、TOTOギャラリー間で開催されていた「311. 失われた街展」 に行ってきました。この大震災で失われた多くの街の昔の姿を1/500のスケールで復元した模型を展示したものです。
 制作したのは、神戸大学をはじめとする日本中の多くの大学の建築学科の学生たちです。関わった大学の友人からこの話を聞いたときに、「そんな大変作業をやったって、いまさら同じものを作れるわけではあるまいし、実際に何の役に立つのだろう?」という冷めた感覚に一瞬とらわれました。でも、何もできない自分としては、実際に行動している建築家の方や大学の教育者の方たちに、深い尊敬と羨望の念を覚えます。そのような方たちが、多大な努力をもって、学生たちと一緒に制作した模型が、いったい何を伝えているのか、実際に見ないといけない、と思い、最終日ぎりぎりでしたが行ってきました。

模型は岩手県田老地区から宮城県陸前高田、宮城県気仙沼、南三陸町、弁天町、福島県相馬港や浪江町まで、被害の大きかった14の町を1/500で500m四方を再現したものでした。小さな木造家屋、道や小川や松林、車やガードレール、電信柱、給水塔まで丁寧に作られたそれは本当に美しく、思わず涙が出そうになりました。 かつてあった人々の生活の息遣いや、生活のいとなみを感じさせる何かが、その模型には存在していると感じました。


細部まで丁寧に作られた模型


津波の前と後の航空写真

人々の失ったものの大きさと刻々と薄れていく記憶のなかで、こうやって第3者が模型によって町を再現することは、その町に住んでいた方たちの生活の記憶を呼び覚まし、アイデンティティーを力づけるきっかけになるかもしれない、と感じました。建築家が入ることで、復興する新しい町に、もともとあった自分の生活の物語を紐解き、住民たち自身が町を作り上げていくことの一助になったら、とても素晴らしいです。

安全で耐久性の良いものを安く、合理的につくるべきだ、という「作る側の論理」から、抜け落ちるものを、丹念に拾い上げる作業。実現されるべき生活や空間の質について、もともと住んでいた住民の物語に寄り添って、一緒に歩ける専門家が必要なのだと思いました。その仕事ができるのは、建築というモノづくりと、人や街の物語を考え、提案することに人生をかけてきた建築家という職業の人たちかもしれない、と思います。まだ行政とのつながりにおいても住民への影響力においても、まだ高い壁がある感は否めませんが、これから復興の中で、一人でも多くの建築家や専門家がそのような仕事に関わっていけますよう、自分への強い祈りも込めて、メリークリスマス!

   
宮城県仙台市若林区の模型



2011/11/28 人を信じる?信じない?~「省エネ建築」のためのスタンス 

先週の土曜日、私たちの設計した「キッズタウン東十条保育園」に、内閣官房長官秘書官の方と、経済産業省の方が視察に来られ、設計者として建物の説明をさせていただきました。


キッズタウン東十条保育園の屋上で話をするみなさん。  

今年の8月に内閣官房副長官の仙石由人氏が視察に来られました。そのときに、「これは、なかなかおもしろい、よくできている」と、興味を持っていただき、今回の視察も仙石氏の推薦で来てくださったとのこと。有難いことです。

今年の8月の仙石氏の視察風景

 さて、今回は半年間のキッズタウンの消費電力やランニングコストの実績を計測したデータを統計して、ご説明する機会にもなりました。
 当初のシミュレーション予測だと、今回の設計仕様は、「基準建築物(旧省エネ基準仕様)」と比較して、約35%の省エネ効果が期待できるとシミュレーションしていましたが、実際に計測データを見たところ、54%もの省エネ・コスト削減が達成されていることがわかりました!年間では300万円以上のコスト削減です。

 今回の節電率を達成した理由は、人の手による省エネがきちんと行われていたためです。エネに効果的なのは高効率の設備機器と同じくらい、人の行動によって大きく数字が左右するということをあらためて確認しました。

今回の省エネ設計に協力してくれたP社エンジニアの方いわく「われわれは、人のことは基本的に信用しないという立場です。できるだけ人が触らないようにすること、機械で自動的に制御することが理想だと思います。」と言って、センサーや自動制御システムをどんどん、取り付けていこうとします。東十条も、高度なマイコン制御システムが導入されており、明るさセンサーで自動調光する照明が入っています。
しかし、コンピューター制御で複雑にからみあった設備にかこまれてしまうと、そこにいる人は、何も操作することができなくなっていきます。

人が、気持ち良いと思える環境を自分で操作しやすい建築、設備をデザインすることのほうが、よほど省エネになるのでは、と私は思っています。

消費エネルギーの少ない最先端の機器を採用しつつ、人が簡単に操作し、コントロールできる余地を作った建築と設備。窓をあけたり、エアコンをつけたり、消したり・・。あたりまえのことですが、いつでも人の手による操作が積極的にできるように設計すること。そのことを意識して設計することが、私たち技術者のスタンスとして、とても大切なことだと思っています。




2011/10/03 キッズタウン東十条」がGOOD DESIGN賞を受賞しました。 

今日、今年のGOOD DESIGN賞の受賞が発表され、私たちが設計した「キッズタウン東十条」が公共用途の建築物の部門でGOOD DESIGN賞を受賞しました。
 このような賞をいただけたのも、事業主の方や、保育園の園長先生、関係者の皆様のご協力やご支援のたまものだと、深く感謝しています。
GOOD DESIGN賞に応募したのは初めてでしたが、応募することで、この賞が何を目指し、何を評価しようとしているか、ということを知るきっかけになりました。 審査委員長は深澤直人氏は、デザインが社会に対して担う役割とは何か、ということをこの賞を通じて問いかけています。

3.11以降の社会において、日本人の価値観で大きなパラダイムシフトが起きています。人の生活に、切実に必要なもののあり方、持続可能な社会に対して「適正」さを実現するためのデザイン、というのを今回の評価の基準に位置付けておられるようでした。

 どんな時代でも、真剣に人や環境の調和、幸せを意図してデザインされたものたちは、時代を超えて、人々を力づけるパワーを持っていると信じています。もしも経済的に厳しい時代になったとしても、そこにある身近なものをいとおしむように、丁寧にデザインされたものに囲まれている生活は、とても豊かな生活でありうるからです。

デザインがそのように、人の生活に寄り添いながら、持続していく価値を創造できればいいなあ、と、そして建築でそのような仕事を実現していきたいと、あらためて考えました。





2011/09/30 建築家の役割~大島芳彦氏の多摩平団地を見学しました。

 先日、JIAの建築セミナーで、リノベーションで有名なブルースタジオの大島芳彦さんに、多摩平団地をご案内いただき、講演していただきました。



 団地は、広い空地空間と樹齢のある緑は豊かな環境でが残っています。建物が老朽化しているのをどうするか、が課題です。
 UR都市機構のルネッサンス計画の一環で、古い多摩平団地を再生させるために、民間事業者を募集し、定期借地権で賃貸住宅をリノベーションする試みで、その中でシェアハウス棟と、菜園、パブリックファームを持つ賃貸住宅部分のリノベーションをブルースタジオの大島氏が設計されました。


リノベーションした部屋をつかって、軽くレクチャーをしてくださった、大島氏。
お話がとてもわかりやすく、おもしろい!


和室を全部ひとつにまとめて、1LDKにリノベーション。


キッチンは、質素ながらかわいらしく、愛着を感じさせるデザインです。
 団地の再生を考える際、ポイントになるのは、周辺の空地の利用方法です。団地の良さは、その緑の多さと広い空地です。そこを菜園にして、小屋もつくり、貸農園としての地域のコミュニティースペースに、というアイデアはとても良いと思います。

また、シェアハウス棟では、1階を食堂、アトリエなどにすることで、街に向かって開かれた表情とテラスをつくることで街に向かって明るい表情を持たせ、開放することをデザインされていました。


1階のバルコニーを外に向かって出入りできるコモンスペースに変更。


住棟間にはコロニーヘーブという貸農園が配置されました。

いつでも、そこに住むであろう人の生活や希望、夢に寄り添って、ソフトというか、人間的な出会いやつながりを作り出すような建築のデザイン。モノとしても「建築」ではなく、住む人の物語をデザインするように建築を作る、という大島氏のリノベーションの世界は、これからの日本の建築の作り方として、とても大切な方法だと感じ、深く共感を覚えました。

建築家の仕事というと、建築というモノづくり、と考えがちです。でも本当は、経済性や社会性、環境への貢献や、街とのかかわり、住む人の個性、生活、あらゆるものを総合して、住む人たちが幸せになれる最適解を、具体的に提案することがきる職業なのだ、ということを、大島氏の話しを聞きながら実感しました。時代は、そろそろそっちに向いて動き始めているのかもしれません。

そのためには、まず引き算すること。過剰な情報のなかから、その人が迷う部分を整理し、大切なことにフォーカスできるようにすることのお手伝い、というのが、建築家の大切な仕事であると・・・。人が、愛着を持てるものを作るということ。

確かに、無意識に普段行っている仕事ですが、あらためて建築家の職能に可能性に触れることができて、希望にあふれるひとときでした。
 古い3Kだった間取りの40㎡強の団地を、壁などすべて取り払って、1LDK+菜園のある暮らし、あるいは、1階のコモンスペースを使ったシェアハウスの提案。インテリアのデザインは、天井をむき出しにしてペンキを塗っただけの簡素なものながら、床の無垢材、オリジナルな味わいのあるキッチン、照明など、雰囲気のあるデザインが、若者の単身者やカップルにはとても魅力的大きさかつデザインです。





2011/09/21 建築知識10月号に「キッズタウン東十条」が掲載されました。

今月号の建築知識に、「キッズタウン東十条」 のアルミ可動ルーバーの記事が掲載されました。

「キッズタウン東十条」は線路側に面して大きな窓とバルコニーを配置していますが、新幹線がながめられる、という眺望のためです。ところが、方角として南西方向に向かって大きく開口を取ることになり、夏の西日が大変な空調負荷をもたらします。日差しをカットしつつ、眺望を確保するという目標をかかげてデザインしたのが可動式アルミルーバーです。JRの線路際ということで、よしずや緑のカーテンなど、ひらひらした弱い日よけだと、万が一はずれて線路側に落下したら大変です。そこで、このようなアルミルーバーをデザインすることにしました。  縦に並べたアルミのフィンを手動で回転させる簡単なものですが、壊れる心配のないし、指を挟んだりといった事故の恐れもなく、保育園でも安心して採用できるデザインにしました。


「キッズタウン東十条」外観

  この特集号でも言われていますが、世の中は、いよいよ省エネ、再生可能エネルギー、環境建築が脚光を浴びる時代になりました。私は、12年前に独立したときからずっと追求してきたテーマですが、はからずもこの震災で一気に国家的テーマになった感があり、うれしい限りです。

 日本のエネルギー自給率は4%(原子力を除く)で先進国で最低レベル。年間23兆円もの化石エネルギーを国外から輸入している中、オイルの価格は今後の上昇が予想され、自分たちの国土の中で安全に発電できる環境を整えていくのは喫近の課題です。今年の8月には、「電気事業者による再生可能エネルギー電気調達に関する特別措置法」が可決。来年7月から施工されるそうです。こうすると、太陽光発電以外の、小水力発電や風力発電でも、発電した電気を、東電などの電力事業者が15-20円/kwhで買い取ることが義務づけられます。
 エネルギーの地産地消を可能にする、小規模な民間発電会社や、建物ごとに発電していく個人が増えることで、エネルギー自給率が20%台まで上がり、原発が一切必要なくなる、そんな日本の未来はもうすぐそこまで来ているのかもしれません。




建築知識の10月号は、「省エネ・節電時代の「エコ設備」」特集号です






2011/08/03 「東久留米の家」が住まいの設計 9月号に掲載されました。

昨年の10月に竣工した「東久留米の家」 が、住まいの設計に掲載されました。


住まいの設計 9月号

引っ越しをされて半年後に撮影した家は、毎日お掃除に気を使っている、というNさんご夫婦のおかげで、家の中はさわやかでやさしい空気につつまれていました。


ダイニングから北側に向かって、リビングとハイサイドライト、サンルームへと視線が抜けます。(写真:大槻茂)



Nさんご家族のだんらん(写真:大槻茂)

 カメラマンの大槻氏に、今回撮影した写真を何枚かわけていただきました。
 撮影したのはカメラマンの大槻茂氏。職人気質の真面目なカメラマンですが、空間の特徴や住んでいる人の自然な表情をとらえるのが上手ですね。


階段から見上げたところ。さらに上にはルーフテラスへ上る階段があり、透明なグレーチングの床から光が落ちてきます。

建築写真のカメラマンは、人によってどんなアングルで何を取るか、大きく違っています。写真というのも、ひとつの作品だと思えばあたりまえですが、建築写真というのは、ちょっと独特の特性があるようにと思います。

建築雑誌の写真は、だいたい人のいない写真を完璧なアングルと添景で納める、というケースが多いものです。それもまた大切な文化ではあると思いますが、先月の内田樹氏の講演で、そのことを批判するフレーズがありました。「建築家の写真はいつも人がいない、まるで人が入ってしまったら壊れてしまうかのような、そういう写真ばかり雑誌に載せるのはよくない。実際、建築家は、最初が最高で、生活が入ってきたらもうだめ、みたいな意識があるのではないか?人がいて、年月がたつごとに味わいが出てくるような空間をつくらなくてはいけない。」という話でした。本当に私もそう思います。

住まわれてからの雑誌撮影は建築よりも人の生活にフォーカスがあたっていて、良い写真が撮れるのだなあ、と思います。そういうふうに、人と建築が調和しながら成長していくような建築を作っていきたいと思います。





2011/06/06 「キッズタウン東十条」が新建築6月号に掲載されました。

3月に竣工した「キッズタウン東十条」 が新建築の6月号に掲載されました。


今月は「保育のための空間」というテーマの特集号です。保育園、幼稚園、こども園など、さまざまな新しい保育園の試みが紹介されています。自分以外の建築家の文章を読むと、なるほどそういう考えもあったか、と新たな発見があります。建築を作ることはいつでも発見に満ちていておもしろいです。

 私が新建築に掲載した設計主旨を転載します。

 「すべての場所が遊び場であるように」
 この建物は、JRの土地に民間が建設と運営を行う「JR東日本グループ子育て支援事業」の一環で計画された、定員90名の認可保育園である。駅前狭小地で保育室面積を確保するため、RC造の5階建となった。園庭もない厳しい環境で建築として何が可能かを考え、建物全体を遊び場にすることを考えた。
 繊細でダイナミックな成長期にある子供たちの遊び場に大切なものは、風や自然光、温度や湿度、においなど、刻々変化する自然を全身で感じられる環境だと思う。2階から4階に配置した保育室は、子供たちがいつでも外に出られるように、建蔽率に入らないバルコニーを南西側全体に張り出させた。デッキ貼りの眺めの良いバルコニーは、子供たちに人気の遊び場になっている。また、園庭の代わりに設置した5階の屋上広場から3階までを、連続する段丘状の屋外遊技場としてデザインした。砂場、すべり台、クライミングウオールなどを階段にからめて造作し、立体的な外遊び空間が実現した。
 保育室は階ごとに乳児・幼児・遊戯室+児童デイサービスに分かれており、各階は間仕切り壁の無いひと繋がりの空間で、段差や水回り、EVコアなどによってゆるやかに分節される。高さ85cmの可動収納家具を使って「食事」や「昼寝」「おもちゃ遊び」など、細かなゾーンを作りだすことができる。
 ある幼児教育家によると、少し高いところから見下ろすという行為は子供の脳を発達させるらしい。子供にとって階段や段差は、大人の危険意識とは別の、新鮮で刺激的な体験になりうる。同様に吹き抜けを見下ろす窓や、町の風景を眺める窓も、子供の目線にあわせて数多く配置した。その結果道路側のファサードは、床レベルに近いFIX窓と通風用の高窓が、リズミカルに並ぶ特徴的な外観になった。
   この保育園が、多様な遊び場や好奇心を刺激する環境を提供し、子供の発達や成長に寄与するだけでなく、大人も新鮮な喜びを体験できる場所として、豊かに育っていってほしいと思う。





2011/04/28 キッズタウン東十条~子供の遊び場がたくさん!

今週の火曜日、雑誌「新建築」の撮影があって、キッズタウン東十条に行ってきました。


道際に植えたハナミズキが花をつけています。

 お天気もよく、子供が外で元気に遊ぶ姿をたくさん見ることができて、とても楽しい一日になりました。

 駅前の5階建ての保育園です。駅脇のJRの敷地は狭くて園庭が取れませんでした。そこで建物の中に、屋外の遊戯場スペース、テラスなどを設けて、廊下や階段など普通に建築で必要な場所すべてを子供の遊び場にしたいと考えました。


0歳の赤ちゃんスペース。赤ちゃん専用テラスがあります。


赤ちゃん専用テラスは、安全に日向ぼっこができるように気をつかっています。


3歳児以上は、砂場とロッククライミング、すべり台で遊べます。階段の登り降りも遊びの一つ。


立体的な屋外遊戯場。小さい子供も積極的に攻めで遊ぶ姿。

 設計のときに想像した以上に、子供が生き生きと遊ぶ姿を見ることは、設計者冥利に尽きる瞬間です。なんという幸せ・・・。建物の撮影より、子供の姿にうっとりする時間が多くなりました。


室内では、さまざまな高さの窓が、子供に人気です。


小さな段差とスロープも格好の遊び場に。


外部廊下は子供が思い切り走りたくなる長さです。

保育園というのは、子供が自由に遊ぶためにある施設です。ほのぼのと暖かい居場所、どきどきするような冒険の場所の集合であるべきだと考えました。


収納の下のアルコーブスペースは、机とカーテンがついて、子供のためのお気に入りスペースに。


この日は、JR東日本のビルの屋上にも登らせてもらって全景も撮影。
子供の建築をつくることは、本当に楽しく、幸せな経験です。




2010/12/18 これからの時代に求められる仕事とは?~西村浩さんと山崎亮さんの対談企画

 先日、JIA建築セミナーで、建築家の西村浩さんとSTUDIO-Lの山崎亮さんをお呼びして、講演をしていただきました。講演を聴いていたのは、受講生である社会人の建築業界の皆さんです。西村さんも山崎さんも、とても話しがおもしろくて、また本質に迫る印象深いお話でした。

 山崎さんは、最近あちこちでひっぱりだこの、知る人ぞ知るまちづくり仕掛け人。いわく、少子化と高齢化を迎えるこれからの日本では新築の件数はどんどん減っていくでしょうし空き家率が高くなっていく時代、建築業界が淘汰されるのは必須である。建築業界全体の仕事の質も見直す必要がある、という現実的な話から始まり、地方都市、離島中山間地でのコミュニティーの再生を実践しておられる、パワフルなお仕事の様子をお聞きすることができました。本当に驚きの連続でした。

 西村さんのお話は、まちづくり、まちおこし、地方都市の中心市街地再生の話でした。まちづくりとは、ハコモノ作りの建築の問題でもなく、単発のイベントを起こす企画の話だけでもだめ。地元の人たちの元気を呼び起こす継続性のある経済の活性化、場所づくりが必要である、というお話。商店街の復活や地元コミュニティーの成熟を促すハード(建築やインフラ整備)を作り出す、という建築家としての仕事の可能性もお話くださいました。 これからの建築は、長期的「まちづくり」のビジョンの中で作っていかないといけない。そのためには、行政の協力は欠かせないが、同時に地元の人を巻き込みながら建築をつくっていくプロセスが大切、というお話でした。西村さんの設計された「岩見沢駅複合駅舎」での住民参加のプロセスと、出来上がった建築を、本当に自分のもののように愛着を持って利用している人々の様子をスライドで拝見して、本当にすごい!と感心しました。

 「まちおこし」というと、名産品を開発したり公共建築を作ったり単発のイベント企画したりで、その町に本当に持続性のある成長変化を起こす方法は明確になっていません。今までの方法では、本当に町の活性化、商店街の活性化にはつながらない、という実感を持たれたという西村さんの話は印象的でした。何か継続性のあるものを作るには、まちづくりの大きな全体ビジョンの中で、少しづつハードを実現して方法論を確立することが大切です。
 キーになる住民とのコラボレーションによって時間をかけて作り上げる建築、町づくりが、少しずつ現実的に生まれつつあるのだなあと、感じました。 まちづくりに最初に大切なのは「人づくり」、そして、そのような活動を可能にする効果的な「場所づくり」です。規制概念にとらわれず、地元の人の能力を楽しく引き出すお二人のリーダーシップとデザイナーとしての勘のよさ、には本当に感動しました。
 こういう力は、これからの仕事をする人間は、真に身につけたい能力なのではないでしょうか?これからの時代、自分の仕事が無い、と嘆くのではなく、真に必要とされる仕事を作り出す人間として、自分を拡大させることができるといいのだろうなあ・・、と思いました。





2010/12/13 「HOME PORTRAIT」に「Trapezium」が掲載されました。

先週の土曜日、新宿のパークタワー内にある「OZONE家作りサポート」で「建築家の選び方」というセミナーの中の一部分で、講演をしてきました。少々の難条件でも、建築家なら思いもよらない可能性を発見して、楽しい家作りが可能だったりする!というような、希望を持てる話しをしよう、と思いながら話しました。

同日「HOME PORTRAIT VOL .3」 が発売になり、その中で、「住宅名人10番勝負」という企画で、私も4ページをいただいて、「TRAPEZIUM 」を掲載していただきました。




 建築家選び、どのようにすればわからない、という方、いきなり建築家のところに尋ねて行くのはちょっと・・・、という方は、「OZONE 家作りサポート 」というサービスがあります。

家づくりで建築家を仲介するシステムの中では、ここは私たちから見ても、1級建築士がアドバイザーになって、きちんとしたサービスを提供している、好感のもてる会社だと思います。
 建築家との家作りって、どんなものなのか、知識や情報が欲しい方は、一度足を運んでそういう講演を聴いてみられるのもよいかもしれません。私も建築家として登録して、仕事をさせていただいていますが、お客様向けのセミナーは、初めて傍聴してみて、OZONEアドバイサーの説明が、的を得た的確なものなので、なるほどー、と感心して聞いていました。





2010/10/29 空を見上げる家~「kokage」 見学日記

先日、建築家の末光弘和さん(SUEP.)にご案内いただいて、我孫子の「kokage」という住宅を見せていただきました。住宅建築賞や東京ガスの環境建築賞を受賞された、とても斬新で美しい住宅です。

 上部に向かってゆるやかにカーブした特長的な壁の中には、床暖用のパネルが埋め込まれており、その面に井戸水を流すシステムを採用して、夏の冷却効果を井戸水によってまかなっている、という設備設計が秀逸で、一年を通して、壁の温度は21度程度を保っているそうです。

壁の中に井戸の水を流しています。トップライトもあって、家の中とは思えない明るさ。


井水をくみ上げて循環させる装置が床下に。

 輻射熱の冷暖房が気持ちよい、ということは、最近注目されるようになってきましたが、躯体を暖めたり冷やしたりする熱源を何にするか、にはいろいろな方法があります。電気をつかって暖める方法、ガスボイラーで温水をまわす、等が多いですが、この住宅ではそういうアクティブな設備を使うのではなく、自然の井戸水で、一定温度を保たせる、というアイデアがオリジナルです。


リビングルーム。閉じない空間。

 壁の向きによって、その場所を規定するデザインはすばらしかったです。 空間のデザインも、新しく、豊かな広がりのある空間でした。その理由は、「部屋」という概念でなく、木陰のように、涼しい井戸水が流れる1.5m巾の壁面が、いろいろな向きに立っているということで、その付近に「場所」が生まれ、それぞれの場所の連続が、少しずつ視線を変えながら連続している、そのようなデザインになっています。天井高さは3.mあることも、この家を何か「住宅ではないもの」に感じさせます。屋根には大胆なトップライトがたくさんあいているので、ついつい上を見上げてしまうので、これは「明るい気持ちにさせる家」かもしれない、と思いました。

 トップライトには、夏は「すだれ」を外から載せるそうですが、そういうローテクな作業も、建て主の方にとっては楽しい体験のようで、とても満足そうに住み心地を語っておられました。  家の中にいるのか外にいるのか、わからなくなるような、開かれた感覚をつくりながら、温熱環境としての快適さを守っている、というのは、本当に秀逸な設計だと思いました。


外観。構造の柱壁が屋外にも連続しています。





2010/03/31 ちょっと見(み)ではわからないものごと ~リノリウム床材のおはなし

皆さん、リノリウム床材というのはご存知ですか?

病院などでよく使われていて、ちょっと見ただけではビニールと似ているシートで、ありふれた材料だなあ、と思っている方が日本には多いようです。昔の人は学校で使ってたような記憶がある、貧しい時代の床材だな、とか、日本人は、どうもリノリウムと聞くとネガティブな印象を持っておられるように感じます。学校建築でもいまやフローリング全盛。天然木だったら自然素材だし、エコロジーっぽいって感じてませんか?

 欧米では、フローリングはそれほどエコロジーで使いやすい材料だとは考えられていません。なぜなら、建築界の安い天然木のフローリング嗜好が、中国などの森林破壊を促進している、と考えられているからです。国産材か、FSC認証森林から切り出した材料ならOKですが、そういう材料はそれなりの価格になります。日本で出回っている無垢フローリングのほとんどは中国から輸入されていて、違法伐採や安い賃金をもとに生産された材料である可能性が高いのです。

価格が安いということは、いったいどういうことなのか、疑ってみる必要があります。

 リノリウム床材は、比較的安価であり(4000円/㎡程度)、環境に負担をかけない素材です。原料は亜麻仁油とコルク粉、木片など、完全に天然な材料だけでできていますので、廃棄しても土に帰ります。材料の亜麻は生長が早い草で、伐採してもまた生えてくる、というわけで、自然破壊にもつながりません。


リノリウムメーカーのパンフレット

 見た目がビニールシートっぽい、というだけで敬遠されがちなリノリウム。ビニールシートは化学合成物質で、微量ながら化学物質を発散しますが、リノリウムは、地球にも人にも完全にやさしく安全な材料なのです。

表面的なイメージや値段で判断しないで、材料の素性や、背景にある意味を読み込んでから、判断して、選択できるようになりたいですね。







2010/03/23 蓄熱式床暖房のすすめ~夏と冬の快適さを実現すること

家づくりのなかで、どこにお金をかけるかのバランスはとても大切ですね。広さが大切な人、キッチンやお風呂など機能性が一番大切だと思う人、仕上げ材には本物を使いたい、耐震性能に防犯性にこだわる、それぞれごもっともです。設計するということは、その方にとって一番大切なことを、あぶり絵のように浮かび上がらせていく作業だと思っています。
本人も気づいていないかもしれない「その人にとっての大切なこと」をコミュニケーションの中から汲み取って、新しい生活のあり方を提案して、幸せな生活を実現する、ということが仕事です。その際、「優先順位をつけること」は、本当に質のよい家で、コストパフォーマンスの良い家づくりに、とても大切なことです。

 さて、建築家として家づくりの相談を受けるときに、私が作る家は、部屋を壁で分けるのでなく、家の空間全体がのびやかに連続していることを大切にしています。外部にも部屋のような空間、中庭やバルコニーがあって、中とがつながって、広々感じられる空間をデザインするのは、家作りの基本中の基本です。


輻射式床暖房を設置した相模湖東の家。

夏も冬のエアコン無しですごせるそうです。
 そのような空間をつくることは、風通しもよく、日差しもあちこちから入ってきて、夏の快適さをつくるのは簡単です。

 ところが、逆に冬の寒さを防ぐのは、ちょっと別のアイデアが必要です。冬は、狭い部屋でストーブをたいたりコタツに入ってじっとしてるのが一番暖かいというのは事実。でもそれでは、あたりまえすぎてつまらないですね。
 冬の暖かさは、まずは日差し。太陽光を最大限取り入れる窓をデザインすること。それにプラスして「夜間蓄熱式床暖房」を建築として取り入れることは、かなり優先順位を上げて提案しています。
 費用は60万円~100万円程度の初期費用で、家全体を足元から快適に暖めてくれて、夜間電力をつかって土間床全体に蓄熱することができます。
エアコンのように風もなく、家の構造(壁や天井、床)に熱をたくわえるので、身体にやさしくもっとも快適な室内環境を実現できます。夜間電力を使うので、家全体を暖房していても、月々のランニングコストは3~4000円(30坪程度の家で)
 無印良品の家で、同じシステムをオプション品としてつけていると聞き、見に行ってきました。
夜間に5時間だけ土間の床に温水を流して蓄熱します。昼は土間に蓄熱された熱だけでふわっと暖かい、を体験してきました。


無印の家外観


吹き抜けがあって開放感の高い設計でした。

厳寒日にはエアコンも併用するそうですが、基本的にはこの土間床暖房だけで過ごせるようです。もちろん、断熱性能もかなり高いことが前提です。
空間の開放性と風の通る家にプラス土間蓄熱式床暖房、このセットが、今の住宅設備のお勧めすです。





2010/03/16 建築の色について考える

先日、都内のとある駅のホームに立っていると、線路のむこうに建つマンションに目が止まりました。なんとなく不思議な存在感があります。

水色とライムグリーンの外壁に、ピンクの手すり、雨どいにもピンク。ドアの色はグラデーションのピンクで、家によって微妙に色が違っています。
   

アップで見るといろいろな色が見えてきました。

「ほー、カラーコーディネート、がんばってたのね。ちょっと渋谷系ファッションカラー(?)というか、アジアの路地的彩色というか・・・。」
良いとか悪いとかはとりあえずおいておいて、デザインした人が一生懸命色にこだわっている心理に興味がわいておもわずシャッターを切りました。

 日本人は色については、それが建築や車になると、とても保守的ですね。先日も「色を使うとすぐ飽きるから、やめとけ、と親に言われました。」とクライアントの若い奥様が口にされた言葉が耳に残りました。

 色は、音と同じように、人の心理に影響を与えるものだと思います。建築は、多くの人の目に長い時間さらされるので、その影響に責任があるということで、家には白とかグレーとか、ベージュとかといった外観に選ぶ人が多いです。
 一方、オランダやチェコなどを旅すると建築は驚くほどカラフルに彩られていることがあり、そこにははちゃんと調和があって違和感がありません。ところが、同じような色で日本の町を再現すると、とたんにオモチャの家のような軽薄な風景が立ち上がります。

  建築の色は、その国の風土、湿度や土の色、植生と密接に関係があると思っています。
樹木の色、空の色と調和するようにしないといけない、ということを人は直感的に知っているのでしょう。

とはいえ、自分は建築を設計するときに色を使うことが、意外と多いのです。


武蔵小山アパートメント

ただし、いつもインテリアのみで、かなり慎重に、日本の伝統色といわれるような微妙な色から選んで使います。 部屋の中に一面だけ色をつける、というのは良く行う手法です。色を塗ることで、部屋が閉じた四角でなくなり、奥行きが出て広く感じる効果が出ます。


うつのみやアパートメント

 ある色を建築に取り入れることで、人を元気づけたり、おだやかな気分にしたり、コミュニケーションが活発になったり・・・。そういったやり方は、コストをかけない建築デザインの手法でもあります。  効果的に色を使う方法、これからも探究していこうと思います。





2010/02/19 建物と地盤の関係~身体をつかって考える

建築をつくるときに、敷地の地盤調査はとても大切です。
建物の重さに対して、土の「地耐力」が十分か確認するためです。

さて、先日の中沢新一さんのアースダイバー でも話しましたが、東京には洪積台地と沖積台地があります。このような土地の歴史によって土地の耐力が歴然と異なります。沖積層の青い部分は昔は海だったり川だったりするので地盤が弱いのです。また、新しく盛土した場所は、雨のたびに地盤が締まっていくので、地表レベルが下がってしまい、結果建物が傾いてしまうなんてことも・・。
地耐力を調査するのは一般的には「ボーリング調査」。保育園の敷地で先日ボーリングを行いました。


ボーリング調査をしている様子。

費用は平均して20万円~30万円程度です。土を掘っていって、地耐力と土の種類を確認していきます。50kN/㎡が5m以上連続するまで掘り続けます。
 一方、2階建て木造住宅の場合は建物が軽い(10kN/㎡程度の重さ)ので地耐力は20kN/㎡~30kN/㎡以上(キロニュートン)あればよい、ということになっています。その場合、スウェーデン式サウンディング試験という簡易な調査方法を使います。これだと調査費用は3万~8万円程度。
 さて、このスウェーデン式サウンディング試験、手軽ですが「地耐力」としては目安程度の結果しか出ません。スウェーデンの結果20kN/㎡程度の耐力でも、掘ってみたらすぐにローム層(関東ローム層の地耐力50kN/㎡)があった、というケースがあります。そのような、古い土地では、スウェーデン式+ハンドオーガーボーリング(土を掘ってローム層のレベルを確認する試験)を一緒にやることをお勧めします。


この赤茶の土がローム層です。

正確な地耐力を把握することで、必要十分かつコストパフォーマンスのよい基礎の設計を行うことができます。

 私の場合、構造計算は信頼できる構造家に外注しています。構造設計はより安全側に設計をすればベターなのは間違いないですが、そのために過剰な費用がかかることはお客様にとって負担になります。そこで、どのあたりに納めるのがよいのか、「コストパフォーマンス」と「安全」のさじ加減は、構造家の「経験」と「勘」によるところが大きい。特に地盤の解釈については意見が分かれることが多いという事を、最近発見しました。これは・・大変悩ましい・・・。

迷ったときは、「直感的にわかりやすい説明ができる人」を信頼することにしています。優秀な構造家の皆様には、ぜひこの能力を身につけていただきたいと思います。

また、基礎を作るための土を掘った底の地盤(=根切底「ねぎりぞこ」と言います)の閉め固めも大きなポイントになります。現場で、閉め固めが完了したときに、土の固さを確認するのは構造家の仕事として重要です。構造家と一緒になって、私も横でガシガシと土を踏んで確認することは、欠かしたことがありません。十年以上も一緒に現場を見ていると、勘と身体が鍛えられ、足下の土が何kN/㎡か、想定できるようになってきました。

建築の仕事、頭より「身体で考える」ことのほうが、意外と多い職業です。





2010/02/12 中沢新一さんと陣内秀信さんのお話を聞く~「東京のみえない力」 

 先日は、JIA建築セミナー に人類学者・思想家の中沢新一 氏と、建築史家の陣内秀信 氏をお招きしてのエキサイティングな対談を行いました。タイトルは「東京のみえない力」。

 陣内秀信氏が1985年に出版された著書「東京の空間人類学」は東京の古い地形、水辺、歴史や自然、人の暮らしを研究され、今現在ここにある都市との深いつながりについて語った東京の空間分析の名著。一方、中沢新一氏といえば「チベットのモーツアルト」をはじめ、軽やかな語り口で人間存在の深部に迫る人類学者です。9.11の深い意味を分析した「緑の資本論」も鮮やかな論理が印象的でした。その中沢氏が、2005年に出版された「アースダイバー」では陣内氏の本と同じように東京の空間を扱いながら、人類学的で、縄文的、宗教的なアプローチで分析したもので、建築関係者や学生の間でベストセラーになっています。

 陣内氏のお話では、地形、水の流れや植生が、東京の都市の骨組になっていて、それはヨーロッパやアメリカの都市のグリット状に人為的にデザインされた大都市とは大きく異なる、というお話です。身体的に「ああ、そうだな」、と納得する話ばかりでした。

 一方の中沢氏は、いきなり、人の「心のトポロジー(位相)」の話からはじまります。位相としては、 ドーナツ型の閉じた系と、外部とつながる開いた系。トポロジーの概念では、丸いドーナツも四角いドーナツも、トポロジー的に見ると同じ形、というわけです。

中沢氏のアースダイバー。東京を2色でわけて、古くからの「洪積台地」と水際を埋め立てた沖積大地が複雑に入り混じる縄文時代の地形を再現したアースダイバーマップを見せてくださいました。


アースダイバーマップ。白いところは洪積台地です。青は沖積台地。

分析によると「水際」と「台地」の境界部分に、神社や古墳、縄文遺跡などが集中しているそうです。そのような境界には、弥生時代に多くの墓がつくられ「森」があったと考えられています。「水」はあの世とつながるもの、「森(死者のいるところ=亡霊(もうり)が語原?)」は、あの世とこの世をつなぐ結界の役割を果たしていたとか。そこに現在の神社や寺院がつくられているようです。地形と森、水、それらが持つ宗教的意味や人類学的な背景を聞き、近代が失った「場所」の意味、人の意識が放つ場の力について考えさせられました。

都市や建築を作る際に、そこにある「みえない力」を把握しながら、「流れ」をつくりだすことが理想です。経済価値や利潤を追求した再開発も、やり方を見直す時代になっていると感じます。
貨幣や数値に変換できない、物語や意味にあふれるワンダーランドのような東京という都市。見えないものの探求は、とても楽しいですね。



2010/02/06 写真家 都築響一さんの話を聞く~リアルの探求 

先日、JIA建築セミナーに、都築響一 さんをおよびして、講演をしていただきました。タイトルは「東京のリアル・都市の未来」のはずが・・・。

都築さんといえばBRUTUSの編集の仕事を辞め、1990年代に「TOKYO STYLE」を発表。6畳一間とか2DKとか、そこらへんのアパートで暮らしている人たちの、モノのあふれた、部屋の中を撮って写真集にした写真家で、ジャーナリストです。
「雑誌には、建築家達がつくるカッコいいモダンな家ばかりが出てるけど、大部分の日本人はそんな家に住んでいない。日本人のリアルな生活はこっちだよね!」ということで、味のあるキャプションとしみじみと見とれるような写真で当時の若者を魅了しました。
さて、経済不況建築業界かなり元気がない、ちょっと異次元の都築さんの話しを聞いてみよう、と、お気楽な気分で企画したものの・・・なまの都築さんは強烈でした。
最近「東京右半分」 というコラムページを立ち上げ、東京の右側、台東区や江東区の前衛?を精力的に取材しておられるようです。人に言えない「恥ずかしい」と思う、裏の趣味、アダ○トも徹底すれば超前衛アートにも見えてくる?とか、何の意味もない(ように見える)ことに全身全霊をかけている「マイナーな変な人」が、偉大な人も見える?

 話の中で、「東尋坊」から、毎日飛び込みをやっている「どりゃーおじさん」を紹介してくれました。「東尋坊」といえば、泣く子も黙る断崖絶壁。自殺の名所として毎年飛び込む人が後を絶たない、あの場所です。そこに、毎日、黄色のビキニパンツを履いて「ドリャー」と叫びながら飛び込み、その後自力で崖を這い上がってくる、そして、また飛び込む、を繰り返しているおじさんがいたそうです。飛び込む回数を生きがいにしていて、2万回を超えたそうですが、そのうち椎間板ヘルニアになり、ドクターストップがかかったとか。インタビュアーに「なぜそんなことを?」と聞かれて「男のロマンですかねえ」と真面目にこたえる中年の男性。

 すごいたくさんお金をもらって、「やりたくないこと」をやるか、お金はあきらめて「好きなことだけやるか」という人生の選択肢は、誰にでもあるとして、都築さんは堂々と後者を選択した人でした。そういうときは、「東尋坊」から飛び降りるようなもの。それには、「周りの人の反対を聞かない体力が必要」、だそうです。飛び込んだ人には、本当に醍醐味のある人生が待っている・・・? 経験した人しかわからないでしょう。

普通の人、無名の人たちへの「愛」があふれた講演でした。人間存在に対する全肯定っていう感じ・・。抱腹絶倒のなか、いつの間にか禅寺で仏法でも聞いているような気分にさせる語り部ぶり、本当に面白かったです。



2010/02/01 信じるのはどっち?~珪藻土建材の性能について 

最近のクライアントの方にアトピーにお悩みの方がいて、お住まいのマンションの空気が原因では、という推論しています。その方は、しっくい壁のご実家に帰ったときや、海外ではアトピーが軽くなるそうなのです。最近はシックハウス予防条例もできて、建材が安全になったと言われますが、身の回りの建材には少量ですが化学物質は含まれていて、シックハウス症候群、アトピーを発症する方もいるのだ、ということを知りました。
さて、どうしても有害物質がゼロにならない環境を改善する素材として「珪藻土」というのがあります。珪藻土は、湿気やにおい、空中の有害物質を吸着して分解する機能を持っています。この方には珪藻土の壁や天井をぜひお勧めしたい。
珪藻土の塗り壁、今回は気合を入れて本当によい珪藻土を探そうと決意!まず、吸湿性能 ㎡あたり何グラムの水を吸湿するかのグラム数を確認すること、これなら安心。あと、固化材は安全な海草系の糊を使っている、等、自然素材にこだわっていること、等・・・。珪藻土は何%入っているか、も確認!!数字のデータを見るのは安心感があります。老舗のS社はきっちりとしたデータがカタログに出ています。
 ところで、日本珪藻土建材のエコクイーン という製品。前からよく使っていたので、この会社に電話して「珪藻土の含有量はいくらですか?吸湿性能は何グラムなの?」と質問したところ、「そのようなデータはつくっていません。そのかわりお客様の声を読んでください」と言われ、ちょっとムっとしました。「科学的なデータがないなんて、けしからん。ほかのものと比較ができないじゃないですか!」とメーカーの人に文句を言いました。
 ところが、送られて来た資料に添付された「お客様からの感想」があまりの多いのでびっくり。「アトピーがよくなった。」「不眠症が治った」「こどものぜんそくが治った」とか「植物が元気なんです」「100人以上の方の手書きのお礼状をコピーしたものが添付されていました。そして、もちろん材料についての詳しい資料とカタログには、なるほどと思わせる根拠があります。これは確かによいかもしれない、と思わせるものがありました。
 科学的データはわかりやすいですが、人間に対する効果というのは、数値データでつかみきれるものではありません。使った人や動物・植物の感想(これも微妙な話ですが)を聞くこと、場合によってはそっちを信じたほうがよいかも・・・、と思ってしまいました。

エコクイーンをつかったインテリア GARDEN HOUSE

2010/01/27 家庭のなかの電磁波~エコロジーって難しい・・・。 

家の中には、たくさんの電磁波を発生する機器があります。一番気になるのはIH調理器でしょうか?でも。IH調理器は、ここ10年の間に電磁波発生量は、なんと1/100まで低減されたそうです。
技術の力ですね~。とはいえ、至近距離(15cm以内)では強い電磁波(20~40mG)を感知しますので、妊娠中の女性やお子さんは、あまり長時間使わないことをお勧めします。脳に影響を与える可能性があると・・・。

 家の中で一番大きな電磁波を発生する装置で影響が考えられるのは、実はホットカーペットや電気式床暖房です。床暖房は、本当に快適ですよね。でも電気式となると、どうしても電磁波が強くなり(100mG以上)そこに長時間座ったり寝たりすることは、人体に影響がある可能性を否定できないと思っています。

床暖房は、温水式のほうが快適だし、電磁波の心配もありません。料理も暖房もガスのほうがよい?

 オール電化住宅の方も、最近はヒートポンプ式温水床暖房、というものがありますので、そちらを採用することをお勧めします。オール電化については、去年、オール電化についてブログで書きましたが 電気代が安くなっても、電気の使用量がトータルで増えることはエコロジーとしてはマイナスだと思っています。太陽電池をつければOKか、とも思いましたが、太陽電池の家ではインバータ付近では大量の電磁波が発生し、電磁波過敏症になった人がいるそうです。

 あー、本当にエコロジーって難しい・・・。



2010/01/22 目に見えないものを見る~電磁波の人体への影響について 

皆さん、電磁波過敏症という病気をご存知ですか?

 アレルギーや花粉症のように、一旦「電磁派過敏症」になると、わずかな電磁波でも、めまいや吐き気、頭痛、不眠などの症状があらわれるそうです。原因は、低周波の電磁波に長い時間曝されている人がかかるようで、は認知度も低いようです。でも、花粉症と同じように、現代の病気として、そのうち増えていくのかもしれない、と思うと心配です・・。

 電磁波は、電気も光も磁気も、波長を持つものすべてを含んだ広い言葉です。太陽の光も電磁波ですし、地球の磁気もそうです。電磁波そのものが悪い、というわけではなく、波長の長さや変動によって、細胞への影響があるようです。

電磁波で危険なのは放射線はもちろんですが、家庭用電流のような超低周波(50-60HZ)の電磁波でも、強いものに長時間さらされると細胞核のレベルで人体に影響を与えることは、ヨーロッパでは広く認知されています。腫瘍や白血病、精神病の原因にもなるといわれており、高圧線の付近には住宅や学校を作ってはいけないと規制されています。スウェーデンでは、遺伝子や細胞レベルに影響を与えない、安全な電磁波の強さは2mG(ミリガウス)以下、といわれます。実際、私たちの環境はどうなんでしょう?

 子供の施設をつくるのに、安全を確保したいと考え、保育園の計画地のそばを設備事務所のT氏と一緒に、電磁波測定器を持って歩いてみました。

敷地の脇の道路上では0.3mGくらい。近くに電車の高架線がありますが、そこに近づいても1mG以下でした。電磁波は発生源の強さとそこからの距離に大きく影響します。

「普通に歩いている分には意外と小さいですね」、と言いながら、お茶を飲むため、商店街の2階にある喫茶店に入りました。・・・と、いきなり針が振り切れ、なんだこれは!?

見ると、窓のすぐそばに太い電線が何本も走っています。商店街なので、おそらく通電量が多いのでしょう。測定すると10mGぐらいあります。


その場で計れる電磁波測定器です。

こういう、電磁波の強いところには、電磁波遮蔽建築が必要ですね!と、お茶を飲みながらT氏と話しこんでいました。低周波は遮蔽が結構難しいのですが、現在、低周波電磁波でも遮蔽する素材はあるようです。

ちなみに、携帯電話などのマイクロ波はアルミなどで簡単に遮蔽できます。ただし電波は届かなくなります。

長期的に見て、安全で健康な環境とは何かを考えるとき、目に見えないけれども、そこにある「ごくごく微細なもの」をも見きわめて、配慮していく力が、建築をつくるものには必要なのだと感じてます。


喫茶店の窓からみた風景  



2010/01/18 無垢材フローリングのお手入れ 

自分の家の床材は、無垢のバーチ(白木)フローリングですが、お手入れを怠っていたため、5年経ってよごれがだいぶ目だってきました。たまにはお手入れしよう、と思い立ち週末に一念発起。


我が家の床。詳細はこちら

 無垢材といえば、木のナチュラルな素材感が魅力ですから、木の呼吸を妨げない、植物系オイルがよいです。こちらは「オスモフロアクリアー」という床塗装を施しています。 でも、この塗装だと、ちょっとしたお手入れが必要なんです。長年ほっておくとヨゴレがつきやすくなり、なかなか落ちないということも・・。


お手入れを怠った結果こんなにヨゴレが。。。日ごろのお手入れ方法をご紹介します。

普段、雑巾がけをするときは、オスモウオッシュアンドケアーというオイルを、バケツの水にキャップ1-2杯加えて、その水で雑巾がけをします。
   
水にキャップ一杯です。
すると、ヨゴレも取れて木に油分を与えるので光沢や耐久性、発水性が高まりヨゴレ防止にもなります。月に1回程度、行うのが理想ですが、半年に1回くらいでも大丈夫ですよ・・。日常のお手入れと耐久性アップはこれだけで十分。

 でも、ヨゴレがひどくなってしまったら、「オスモワックスクリーナー」という製品を刷り込んで落とします。



どちらも人にもペットにも安全なもので、手袋なしでも大丈夫。ただし、それほど劇的にヨゴレが落ちるというものでもないようです。私の場合4年間お手入れをしなかったため、ヨゴレが定着。なかなか落ちません。こうなる前に、1年に一度はワックスクリーナーでお手入れしましょう!


奮闘した結果、この程度にはなりました。

無垢材のような天然素材は気持ちがよいですが、日常的に少しの手間がかかります。

とはいえ、ヨゴレや傷も味わいになるのが天然素材のよいところ、だと思います。

手間ひまかけるとそれだけ家に愛着もわきますね。

皆さん、建物にも愛情をそそいであげてくださいね。



2010/01/14 アンチバリアフリー論 

猫は高いところが好きですね。 保育園の園長先生のお話ですが、見下ろす、という行為は、脳の発達を促すという研究があるそうです。階段の上り下り、視線の高さの変化は、脳の発達に貢献する、という話を興味深く聞きました。
見下ろすっていいらしい。 先日墨田区にある「うらら保育園」の見学に行ってきました。そこでもわざと保育室内に段差を設けて、1歳児だと10cmくらい、2歳児だと20cmから30cmという段差のある室内をあえてつくっているとのこと。筋肉の発達や脳の発達に、段差や階段が良いというのは、教育で子供の発達を深く考えられている先生方にとって共有される事実なのかもしれません。
 ところで、今の法律や条例で、保育園はすべての部屋をバリアフリーにしなさい、という規定ができました。先日、役所に相談に行ってみたら、やはり例外なくバリアフリーにしないとダメだ、と言われました。
 確かに、車椅子や高齢者にとって、階段というのはバリアになります。でも、幼児や保育士さんすべてに、その基準をあてはめるのは、どうなのだろうか?と思いました。
子供が筋力や脳を鍛え、危険認識力を高める練習をするのに、階段は格好の環境でしょう。子供はちょっとくらい危険でも大事故にならない程度の、バリアーは大切な教材です。どこもかしも段差無しというバリアフリーは、健康な人の体力を奪う可能性もあると考えています。
家の中に階段があれば、人は自然に足腰を鍛えることもできます。高齢者施設は別として、日常的に積極的に階段を上り下りすることが、健康で長生きの秘訣だと思うのですが。。。

  家の中に7つの階段がある「長野の家」



2009/12/07 子供がいきいき育つ場所~「せいが保育園」見学 

今日は、新宿区にある都市型保育園「せいが保育園」の見学に行ってきました。園長の藤森平司氏にご案内いただいて、理念や空間、子供たちの様子を拝見しました。
藤森氏は建築のご出身らしく、ドイツや北欧の幼児教育を学ばれ、日本の幼児教育の問題を指摘してたくさんの本を書かれている有名な方です。子供が自分の力で考え、人とかかわることができるようになるために必要な、保護者や保育士のあり方についてはっきりした理念を持っておられます。
年齢ごとに部屋をわけるのでなく、さまざまな遊びコーナーを用意して子供が「誰と」「どこで」「なにを」するか、自由に選ばせて遊ぶ時間を大切にしておられます。つみきコーナー、絵本コーナー、製作コーナーなど、可動家具でつくられたさまざまなコーナーでおもいおもいに子供が遊びます。ひとりで絵本に熱中する子供、友達と積み木を楽しむ子供、お絵かきをする子供。保母さんや保育士さんの姿はほとんど目に入りません。もちろん、課題保育や一斉保育の時間もありますが、私が見たのはお昼ご飯前の自由時間なのでした。
ユニークなのは「PEACE TABLE」というコーナー。けんかやいざこざがあったら、そこに集まって子供同士話し合って解決する場所、だそうです。「自分のことばで気持ちを伝えよう」と書いてあり、その前に子供が3-4人集まっています。泣いている子供と、冷静に話しを聞く子供、友達の頭をなでるおませな女の子。何を言っているのか、意味はよくわかりませんでしたが、子供同士が緊張感に堪えながらコミュニケーションしている風景に新鮮な感動を覚えました。
PEACE TABLEで話し合う子供たち 
もうひとつ、3歳~5歳の年長さんのお昼ご飯。まず、子供たちでテーブルセットをします。綺麗なテーブルクロスと真ん中に生の小さいお花をかざります。厨房から運ばれたご飯をよそう係りの子供が前に立って給仕をします。立派に仕事をする子供たちは、とても生き生きとしていて自信にあふれています。
 

「安全」と「殺菌」という大人たちの過度な不安によって作られた檻に閉じ込められた現代の子供たち。そこから解き放たれたとき、もって生まれたたくましい身体能力と、自信に満ちたコミュニケーション能力を発達させることができる、という可能性にふれました。ここに来ると、最近問題になっている発達障害の子供が劇的に直ったりするそうです。子供たちは本来とてもたくましい。大人が見方を変えさえすれば、子供は大丈夫なのだ、という希望の光を感じました。



2009/11/06 暗さを大切にすること 

昨日は、新しくお会いした若い建て主の方と、いろいろな話をする機会がありました。お仕事で作曲をされている方で、日常的にも小さな音にすごく敏感である、というお話をされていて、聴覚が普通よりも鋭い方なのだろうな、と感じました。その方が、私の建築のコンセプトの「あえて暗い部分をつくる」というのがおもしろい、とおっしゃっていました。
明るいこと、日当たりのよいこと、というのは家づくりでとてもよく出てくる要望です。日本には「南側信奉」のようなものがあって、マンションでも家でも、南向きの部屋が価値が高い、と信じられています。私自身も、「南向き」は好きで、植物を育てたり、猫が昼寝をしたり、といった自分の生活には、お日様は欠かせない、と思っています。
一方で、自分の建築のコンセプトは、「明と暗、その両方を体験できること」を大切にします。一つの家の中に、明るい部屋と暗い部屋を積極的につくることを、一人暮らしの賃貸住宅でも実現するように努力しています。

暗さには「落ち着き」「静けさ」「眠り」「集中」「優雅」など、人間の活動において必要不可欠で、豊かな奥行きを創り出す効果があります。その日お会いした方も「音楽をつくるときに、サビの前に短調の暗い部分をわざと入れたりして、単純に明るいだけの音調にならないよう工夫したりします。建築でも同じことを考えているんですね。」と言われて話がもりあがりました。
この世界には、何でも2極が存在していて、明-暗、静-動、表-裏、上昇-下降 勝-負など、どんなものにも必ず反対のものがあります。そして、人は意識の上で、「どちらがよいか」と考える癖があるようです。でも本当は、どちらか一方を信奉することはとても不自然で、自然の摂理に反しています。裏と表は両方で一つの世界をつくっているので、どっちがよい、ではなく、裏も表も両方いとおしむ、そういう価値観がこれからの時代に必要なのだとろうな、思っています。



2009/10/30 建築家 菊竹清訓氏の自邸「スカイハウス」の見学会 

先日の土曜日、世界的な建築家の菊竹清訓氏の自邸、スカイハウスの見学会に行ってきました。50年前に建ったものですが、今みても新しく、明快な空間構成を持った斬新な自邸です。


随所に、日本的美意識と世界に通用する近代メタボリズムの建築の幸せな合致を見ました。菊竹氏が九州の水天宮の御子息であったことも、この建築の寺社風の縁側空間が生まれたことに関係があることを、初めて知りました。
この住宅が建った当初は、家の下が5mのピロティー(軒下外部空間)になっていて、そこで客人を呼んでバーベキューをしたり歓談をしたりされていたようです。当時のビデオを見せていただいて、とてもにぎやかに歓談する風景の中に、今は大御所になられた建築家の方々が数多く映し出されていて、おもわず微笑んでしまいました。

その日、81歳の菊竹先生がいらして、お話を伺うことができました。家について、語っておられたのですが印象的だったのは、「建築は、いつも社会的なものです。たとえ個人の家であっても人を招きいれる座敷がなければその建築は十分でない。日本の家は座敷を失ったときに駄目になった。家には30セットの食器を用意してあるべきなのです。」とおっしゃっていて、実際に長い間そのような生活をされていたことを伺い知る自邸、「スカイハウス」でした。


おもてなし、をするのは奥様や女性達だったのでしょうし、そのような文化をささえた女性たちに深い敬意を表しつます。 社会や人、公共に対して、開かれた意識があるかどうかが、「建築家である」というあり方の根底なのだと認識し、81歳の菊竹氏のお元気な笑顔を見ながら深い感動を覚えました。



2009/09/20 オール電化とエコロジーの微妙な関係 

昨今、環境に対する意識が高まっているのは、とてもすばらしいな、と思っています。オバマ大統領の効果も絶大ですね。以前から、環境やエコロジーについて一生懸命考えておられた方もおられると思いますし、私も人一倍エコロジーにコミットがあります。建築において、人と環境にも悪い影響がなく、エネルギーゼロエミッション、さらに自然エネルギーを生産することで、地域生活のエネルギーをすべてまかなえる、そういう未来の建築をつくりたいと夢見ています・・・。 今日は、オール電気とエコロジーについてまじめに考えてみたいと思います。オール電化住宅は給湯器も夜間電力で安くお湯がつくれる、トータルランニングコストはガスより安い、という理論で、なんとなくオール電化は環境に良い?というのは「なんちゃってエコロジー」なお話。まじめな話では、住宅からのCO2の最大発生源は、ガス給湯器といわれています。ガス給湯器から発生するCo2とエコキュートが発生させるCO2は同じお湯に対して約半分ですむからCO2の発生を抑えられる、というお話です。 ところが、私はどうもその辺が腑に落ちないのです。電気というのはそもそも石油や石炭を燃やして熱を電気に変換する過程で大量のCO2を発生しています。さらに電気を発電所から家庭まで運ぶ間に送電中に2/3は消えてしまいます。エコキュートの消費する電気、さらに送電中に失われた電気を作るために発生させたCO2を換算するとどうなのでしょう?深夜電力は安いといいますが、電気を作るために必要な石炭石油の量や発生するCO2の量は同じです。経済を活性化することと環境は、必ずしもパラレルではないのに、環境ビジネスで成功するのがこれからの道、という標語がよく目に付きますね。エコ家電を買いましょう、エコロジー住宅を買いましょう、いろいろと名目上エコロジーを詠っている商品が、本当にエコなのか、きちんと考える時期にきているかもしれません。 風力や太陽光、潮力発電のような電気が大量に作られるような世界になったらもちろんオール電化に軍配が上がりますが、まだまだそのような電力は全体の数%に過ぎません。建築個別に考えるなら、太陽光発電や燃料電池、風力発電を搭載したゼロエミッション住宅ならオール電化にする意味があると思います。電気会社からの深夜電力を大量に使うオール電化は、無駄にしている深夜電力のエネルギーを使うという意味があるのでしょうがで、本質的にはエコではないと思います。 給湯器の問題を解決するのには、昔ながらの太陽熱温水器が一番効率がよいでしょう。太陽の熱をできるだけダイレクトに利用して暖房に使うOMソーラーも意味かなりすごいと思います。太陽のエネルギーを直接利用して、送電線からの電力消費量を抑えることがエコロジーなのは間違いないでしょう!



2009/09/14 ハウスメーカーVS建築家~エコロジー住宅での可能性 

先日、ハウスメーカーで長年設計に携わっておられるS氏とお茶を飲みながらざっくばらんな話しをする機会があり、いろいろ考えさせられました。ハウスメーカーと建築家の違いや長所、短所について、あらためて考えてみました。 最近の環境への意識の高まりに加えて、長期優良住宅制度の開始など、わかりやすい宣伝文句が広がって、どのハウスメーカーも主力商品としての長期優良住宅+エコ住宅を売りに出しています。太陽電池や、さまざまな付加機能もついたゼロCO2住宅が2500万円台とか、この価格でこんな家が買えるのか、と思うと、敵陣ながらあっぱれ、と思ってしまいます。
圧倒的な着工数を誇る大手ハウスメーカーは、買い手にとって、コンセプトや価格が明快で、できあがったものもモデルルームでイメージできるし、品質も安心できそう、という感覚は、大きな買い物だけに安心感を与えてくれます。・・・とはいえ、多くの場合、実際に建てられるものは、予算も土地も、設計も、モデルルームとは違います。契約前に「間取り」を決めて契約を取るシステムのため、担当の設計士や営業マンが短時間に、お客様の要望をできるだけ満たして図面をつくる、いわゆる「間取り設計」になっています。家づくりの一番大事な「肝」である設計には、時間とエネルギーを使えないシステムです。もちろん、メーカーごとの決まりごとがあって、自由な設計ができないというしばりもあるでしょう。そして、設計料という名前ではお金は取れないものの、広告費や営業経費、モデルルーム代などの固定費が、購入価格のなかの3~4割程度含まれているというのがハウスメーカーの実態のようです。
また、メーカーに相談に来る人のなかで、建築家のつくるユニークで「空間」のある家に住みたいという、目の肥えた住まい手が多くなっているとS氏。メーカーは品質には信頼をもたれているようだが、設計に対して自由度が低いという難点、設計者一人で年間数百棟設計しないといけない、という現実があって時間に制限がある。そこのあたりで、もうちょっとなんとかできないか?ということで試行錯誤されている印象をうけました。
自分としてもエコロジーな家づくりにはコミットがあります。でも、エコロジーな家づくり、といったときに、イコール太陽電池、緑化屋根などのエコ設備を装備しても、そこに住む人の体験として何も変化していなかったら、本当の意味でエコロジーな生活は生まれないと思ってしまいます。
暮らしの中で、空や緑、風のにおいなど、自然を感じるような瞬間の多い空間、夏はほとんどエアコンなしでも暮らせる、冬は、足元から暖かい輻射熱暖房などでエアコンなしで快適。ちょっと手間がかかっても庭に植物を育てたり、無垢の木をオイルで磨いたりしてみてはと思う、自然や環境に向かって意識がひらかれてくる家づくり、というのが私の考えるエコロジー住宅です。もちろん、太陽電池も燃料電池も、経済的に余裕のある家庭なら大いにつけてほしいですし、そのためのサポートもしたいと思っています。でも、最初に考えることは、家の性能としてきちんとした断熱性、通風、直射日光の制御、空間の快適さ、それらの基本的なことをクリアするのは、敷地の条件、周辺環境を配慮した設計をすることです。その上で、そこに住む人の幸せな暮らしに必要なものの優先順位をつけながら、無駄なものを省き、目に見えない基本性能や、人の体験に影響を与える部分にお金をかける、それらの知恵に対する対価として、設計の意味や価値への理解が広がってほしいと思います。



中古マンションリフォームのすすめ~2倍の広さを感じる空間デザイン

都心に住みたい、でも家賃は高いし一戸建てはちょっと手が出ない、という方、中古マンションはうまく選べば満足度はかなり大きいです。面積がちょっと狭くても、建築家に依頼してリフォームすることで広さが2倍に感じられたり、十分な収納も取れたりする方法があります。
その前に、マンション購入のチェックポイント
1. 耐震性について 竣工が1981年以前のものは、耐震基準がゆるいので、できるだけそれ以降のものを選ぶようにする。(新耐震以降)
2. 管理体制がしっかりしていること。12~15年おきに大規模修繕計画がされていること。管理人さんが掃除やメンテナンスをきちっと行っていることもチェック。全体戸数が少ないと管理費が高くなるので注意。
3. 立地環境チェック。駅からの経路や近所にあるものなどチェック
4. バルコニーは共用部で費用がかからないのに、自分の領域のように使いこなすことができるので、こういうものがついているとお徳感があります。
5. 遮音対策についても確認。
6. そのほか、日当たり、眺望、風通しなど自分のこだわりポイントを明確にして、 業者がリフォームする前のものを安く手に入れたい旨、不動産屋さんに依頼しておく。
以上の項目をできるだけ満たすような物件を探して見ましょう。その上で、面積2倍に感じる目から鱗の広々したリフォーム術。
1. 自分の大切にする生活は何かを明確にする。友人を呼ぶことのできるリビングダイニング、ガーデニングテラスを楽しむ、食べることを楽しむ、充実した書斎空間をつくる、リラックスできる映像空間をつくる、浴室を広がりを持たせて、等等。
2. 小さい空間と大きい空間のメリハリをつける。空間を立体的に利用する方法を考えると面積が2倍に感じられる家も可能です。
3. 収納スペースをきちんと確保する。収納スペースは、家具屋さんよりも、大工さんに壁をつくってもらって、建具屋さんに扉をつけてもらうほうがコストが抑えられ、大容量の収納が可能です。
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2009/08/08 家作り~気になるコストのしくみ

建築のコストについて、今日は少し考えてみます。家づくりの見積もりは、ハウスメーカーだと、坪単価でベース仕様が決まっていて、何か要望や追加事項があるとそれにどんどん見積をプラスしていく、という方式を取っているようです。ですから、ハウスメーカーの図面は、申請用の最低限平面、断面、立面の数枚の図面で工事費の契約をすることになります。
一方、設計事務所が設計する家は、まず設計士がお客様の要望をもとに図面を作成し、細かい仕上げや構造、設備の仕様などすべてを決めた上で工務店に見積もりを取ります。相見積りといって、何社かの工務店に見積もりを取りますが、このとき、工務店は設計図にあるものをすべて数量で拾って、それに単価をかけて、積み上げ式で明細見積もりをつくります。この単価をかけるときに、よくあることしては、工務店の担当者がおよそこんなもんだろう、というような勘で金額を入れて、契約を取るために、ちょっと抑えた価格にしておこう、とか、ここは少しお金がかかりそうだから高めに、とか、微妙にさじ加減を加えながら金額を入れてしまうことです。この見積もりを、設計士が数量や項目についてチェックし、間違いを指摘したり、価格の査定を行ったりして承認します。最後は工務店同士の価格競争の中で「値引き」が発生したりして契約金額が決まり、工務店と建て主の方とが契約を結びます。
契約書には、設計事務所が書いた50枚以上の図面に加え、工務店の明細見積もりが添付されます。その意味は、この契約金額で、この図面にある内容をすべて含んだ家をつくります、という約束です。万が一見積もりに間違いがあって見積もりに入っていなかった、あるいは金額が予想よりも高かった、という事態があっても、図面にある以上、工務店が負担してきちんとそれを工事してもらう権利を持つ、という意味です。逆に、契約後、見積もりに余分に入っていた項目がある場合、それは値引きしてもらえるか、というところはケースバイケースといったところ。あきらかに余分なものが発見された場合は値引きしてもらえますが、数量が多かった、とか単価が高いのでは、といったことは指摘してしまうと、(こういうことのないよう、契約前に十分チェックしたはずなのですが、それでもたまにはそういう箇所が出てきます)今度は工務店から、こっちの項目が抜けていた、下請けから出てきた見積もりが高かった、ということで実際にはこんなに予算オーバーなんです、という内情の説明が先日の中沢新一さんのアースダイバー始まり、収集するのが難しくなったりします。
基本的に契約見積というのは、工務店の責任ということになっていて後からつべこべ言えない仕組みになっています。ですから、設計時の仕様を落とすことなく、契約金額内で良い仕事をしてもらうことを第一とし、よほどのがない限り、契約見積もりの変更を行わないことにしています。そのためにときには、工務店の窮状を救う知恵を出しながら進めていく、という業務が発生したりします。とはいえ、設計士としては、できるだけよいものを契約金額内で、という職能的欲望がありますので、工務店にお願いしたり駆け引きしたりしながら、完成するまで現場でも粘り強く建築に意図とエネルギーを注ぎ込む、というのも現場監理の醍醐味です。
最近の建築業界の不況のあおりを受け、工務店の儲け分というのがどんどん減っていて、ぎりぎりで受注しているケースも多いと感じます。そういう状況でも丁寧に誠実な工事をしてくれるように、設計士がこまめにチェックしたり応援したりすること、工務店と二人三脚のような関係で、パートナーシップを組む必要があるな、と感じます。
建設業界の価格の透明性、というのは大切な課題ですし、設計事務所が入ることで、すべての材料、工賃の価格の内訳がわかって契約できるのですが、実際の現場での価格に関してはどうしても一致しないことがあり、本当に全部透明にするのはまだ困難が多いと感じます。



2009/07/07 夏の涼をつくる建築

建てこんだ住宅地で、夏の涼しさを実現する方法はあるでしょうか?
南も東も西も、四方に住宅が近接して建っている場合、通風を確保するのは簡単ではありません。
まず、できるだけボリュームを出して、吹き抜けをつくること。吹き抜けの上部に、風抜きのための煙突のようなトップライトや階段室など、他の屋根より一段飛び出した風の塔をつくることは、家の中に風を呼び込む上でとっても有効です。

これは、自分が設計した千駄木の家の断面です。中心に階段室を設け、その上部に屋上テラスへ抜ける風抜き窓を設けます。家の屋根の上部を吹く卓越風が屋根の上を走るとき、高い部分に空いた窓のまわりに負圧ができ、室内の空気をオーバーフローさせる力になります。
その結果、下部の部屋の窓から風を引き込み、体感できる風をつくることができます。夏の風の流れを考え、オーバーフロー効果を作る窓を配置して、部屋の下のほうのも窓をつくり、家全体に風が流れるように開口部をコントロールすると、エアコンがなくても風を感じる住宅をつくることができます。
その上で、 屋根の断熱は2重に行い、壁の断熱も十分に行うこと。千駄木の家の屋根、フェノール系断熱材30mmの24kのグラスウールを100mm敷設しています。
24kのグラスウール100mmの写真 袋を開くと150mmはあります。 高断熱で、風の道をつくること、あとはダイレクトな直射日光を入らないようにすることで、夏の涼のある家をつくることができます。



2009/06/08 スペースのはなし

スペースって何でしょう。日本語では空間。設計では、よく空間をデザインする、という言葉を使います。しかし、空間というのはあいまいな言葉です。何もない(空)間にあるものです。空間には建築が作る空間と、人がつくる空間、物がつくる空間、あるいは気配のようなもの、いろいろあります。そして、もうひとつ「場」という言葉も自分はよく使います。
空間は部屋のように、壁や天井がある固いもので規定された場所のようなイメージがあります。場所、というと床や地面など、人が立つ大地みたいなものがあって、そのまわりにぼわーんと広がる空気、気配みたいなものを指して、「場」をつくる、というイメージで考えます。場をつくることと空間をつくることは似ていますが、ちょっと違う。
空間は、大きさがあって物質によって規定される意味が強いと思います。物質に寄っている、というイメージです。「場」は、そこにいる人、感じていること、雰囲気、そこにあるさまざまな環境要素、物質以外のその場にある目に見えない質をもった、空気のように背景に広がる何か、です。 場は密度があり、人の感情も場をつくります。
強い感情を持った人のそばにいると、何か影響を受けます。良い感情には癒されるし、その反対の場合もあります。 人はとても繊細で、目に見えないエネルギーを感じ取る力があるのだと思います。そして、建築家によって強く意図された空間には、強い場の力が働きます。たくさんの建築を見てきましたが、本当にすばらしい建築には、圧倒的に場の力が発生します。
スペースという言葉は、「空間」と「場」という意味、両方の意味をあいまいに包含できる便利な英語だと思います。私は空間をつくるときに、その場所に発生する「場」についていつも考えます。人がリラックスして心が開放されるような「場」のデザイン、なじんだ日常の感覚から少しだけシフトするような、感覚を目覚めさせるような場のデザイン。そのような空間を創ることが私の仕事です。



2009/3/20 家の値段

建築は、よく大きさを面積や坪数であらわします。
家の販売価格は面積は何坪で何千万というような、坪単価、面積で買い物感覚で建築を判断するところがあります。価格や面積といった数字は客観性があって、ある意味、信頼できる情報です。それに加えてLDKというような間取りもあわせればほぼ必要な情報が満たされている、と人は感じてしまいます。
でも、本当には建築、家はとくに、面積や坪単価で価値を測るものではないですよね。その家がどんな土地に建っているか、見晴らしはどうか、日当たりはどうか、風通しは?どんな生活を想定して設計されたのか、住む人の個性についてどれだけ考えられているのか、素材はどうか、構造材は、基礎はどうなっているか?さらに、その素材が流通している経路、建設工事に携わった人がどのような態度やどのような環境でつくったか、そういうことまで建築に大きく影響してきます。
そして、目に見えない人の気持ちは、必ずしも高値がつくものではありません。 この資本主義社会では、お金は、物質的なものの数値に対応しますから、面積や材料価格などでほぼ価格は決まります。でも、そこにかけられた目に見えない意図やアイデアは、設計すること、という目に見えない力でその場所を形作るのです。  良い建築をつくることは、本当にいろいろなことをクリアしていく必要があります。そして、コストも大切ですし、それ以上に、長く使われて、そこに暮らす人を幸せに、健康に、そして創造性をはぐくむような建築をつくりたいと考えています。


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