建築コラム|デザイン住宅は東京の田口知子建築設計事務所

田口知子建築設計事務所

建築コラム

2010/12/18 これからの時代に求められる仕事とは?~西村浩さんと山崎亮さんの対談企画

 先日、JIA建築セミナーで、建築家の西村浩さんとSTUDIO-Lの山崎亮さんをお呼びして、講演をしていただきました。講演を聴いていたのは、受講生である社会人の建築業界の皆さんです。西村さんも山崎さんも、とても話しがおもしろくて、また本質に迫る印象深いお話でした。

 山崎さんは、最近あちこちでひっぱりだこの、知る人ぞ知るまちづくり仕掛け人。いわく、少子化と高齢化を迎えるこれからの日本では新築の件数はどんどん減っていくでしょうし空き家率が高くなっていく時代、建築業界が淘汰されるのは必須である。建築業界全体の仕事の質も見直す必要がある、という現実的な話から始まり、地方都市、離島中山間地でのコミュニティーの再生を実践しておられる、パワフルなお仕事の様子をお聞きすることができました。本当に驚きの連続でした。

 西村さんのお話は、まちづくり、まちおこし、地方都市の中心市街地再生の話でした。まちづくりとは、ハコモノ作りの建築の問題でもなく、単発のイベントを起こす企画の話だけでもだめ。地元の人たちの元気を呼び起こす継続性のある経済の活性化、場所づくりが必要である、というお話。商店街の復活や地元コミュニティーの成熟を促すハード(建築やインフラ整備)を作り出す、という建築家としての仕事の可能性もお話くださいました。 これからの建築は、長期的「まちづくり」のビジョンの中で作っていかないといけない。そのためには、行政の協力は欠かせないが、同時に地元の人を巻き込みながら建築をつくっていくプロセスが大切、というお話でした。西村さんの設計された「岩見沢駅複合駅舎」での住民参加のプロセスと、出来上がった建築を、本当に自分のもののように愛着を持って利用している人々の様子をスライドで拝見して、本当にすごい!と感心しました。

 「まちおこし」というと、名産品を開発したり公共建築を作ったり単発のイベント企画したりで、その町に本当に持続性のある成長変化を起こす方法は明確になっていません。今までの方法では、本当に町の活性化、商店街の活性化にはつながらない、という実感を持たれたという西村さんの話は印象的でした。何か継続性のあるものを作るには、まちづくりの大きな全体ビジョンの中で、少しづつハードを実現して方法論を確立することが大切です。
 キーになる住民とのコラボレーションによって時間をかけて作り上げる建築、町づくりが、少しずつ現実的に生まれつつあるのだなあと、感じました。 まちづくりに最初に大切なのは「人づくり」、そして、そのような活動を可能にする効果的な「場所づくり」です。規制概念にとらわれず、地元の人の能力を楽しく引き出すお二人のリーダーシップとデザイナーとしての勘のよさ、には本当に感動しました。
 こういう力は、これからの仕事をする人間は、真に身につけたい能力なのではないでしょうか?これからの時代、自分の仕事が無い、と嘆くのではなく、真に必要とされる仕事を作り出す人間として、自分を拡大させることができるといいのだろうなあ・・、と思いました。





2010/12/13 「HOME PORTRAIT」に「Trapezium」が掲載されました。

先週の土曜日、新宿のパークタワー内にある「OZONE家作りサポート」で「建築家の選び方」というセミナーの中の一部分で、講演をしてきました。少々の難条件でも、建築家なら思いもよらない可能性を発見して、楽しい家作りが可能だったりする!というような、希望を持てる話しをしよう、と思いながら話しました。

同日「HOME PORTRAIT VOL .3」 が発売になり、その中で、「住宅名人10番勝負」という企画で、私も4ページをいただいて、「TRAPEZIUM 」を掲載していただきました。




 建築家選び、どのようにすればわからない、という方、いきなり建築家のところに尋ねて行くのはちょっと・・・、という方は、「OZONE 家作りサポート 」というサービスがあります。

家づくりで建築家を仲介するシステムの中では、ここは私たちから見ても、1級建築士がアドバイザーになって、きちんとしたサービスを提供している、好感のもてる会社だと思います。
 建築家との家作りって、どんなものなのか、知識や情報が欲しい方は、一度足を運んでそういう講演を聴いてみられるのもよいかもしれません。私も建築家として登録して、仕事をさせていただいていますが、お客様向けのセミナーは、初めて傍聴してみて、OZONEアドバイサーの説明が、的を得た的確なものなので、なるほどー、と感心して聞いていました。





2010/12/06 東十条保育園 現場レポート ~エコロジーな保育園の設計手法

東十条の保育園のコンクリートの躯体が4階まで立ち上がり、サッシを取り付けはじめました。内装工事が始まります。

アルミサッシの取り付け風景

この建物は南西側にJRの線路があって、日あたりと眺めがよい(新幹線が見える!)ということを生かすため、こちらの面を全面バルコニーにしてガラスの引き戸をつけています。その結果、設備設計士から「夏の西日のせいで、大変なことになりますよ。エアコンを大量に設置しないと」といわれ、何か対策を!ということで考え出したのがアルミルーバーです。夏の西日はカットしたいけれど、冬の日差しは入れたい、そんな野望をかなえるのが「アルミ可動ルーバー」なのでした。




2階の保育室のバルコニー先でモックアップ(原寸での製作確認)を行いました。

 アルミの薄い羽は15mm×250mmの縦型です。手動のハンドル操作でくるくる回転するので、西日が暑いときは日差しに向かって垂直に傾ければカットできる、という仕組みです。


1階の天井には設備機器が付き始めています


道路側はいろいろな窓があいています。

 この保育園では、床に冷温水が流れるパイプを敷設。夜間の電気でコンクリート躯体に蓄熱します。昼間は輻射熱でふんわり暖かい、(夏はひんやり)を設計で取り入れています。

 いろいろなエコロジー設備を駆使した保育園です。



2010/10/29 空を見上げる家~「kokage」 見学日記

先日、建築家の末光弘和さん(SUEP.)にご案内いただいて、我孫子の「kokage」という住宅を見せていただきました。住宅建築賞や東京ガスの環境建築賞を受賞された、とても斬新で美しい住宅です。

 上部に向かってゆるやかにカーブした特長的な壁の中には、床暖用のパネルが埋め込まれており、その面に井戸水を流すシステムを採用して、夏の冷却効果を井戸水によってまかなっている、という設備設計が秀逸で、一年を通して、壁の温度は21度程度を保っているそうです。

壁の中に井戸の水を流しています。トップライトもあって、家の中とは思えない明るさ。


井水をくみ上げて循環させる装置が床下に。

 輻射熱の冷暖房が気持ちよい、ということは、最近注目されるようになってきましたが、躯体を暖めたり冷やしたりする熱源を何にするか、にはいろいろな方法があります。電気をつかって暖める方法、ガスボイラーで温水をまわす、等が多いですが、この住宅ではそういうアクティブな設備を使うのではなく、自然の井戸水で、一定温度を保たせる、というアイデアがオリジナルです。


リビングルーム。閉じない空間。

 壁の向きによって、その場所を規定するデザインはすばらしかったです。 空間のデザインも、新しく、豊かな広がりのある空間でした。その理由は、「部屋」という概念でなく、木陰のように、涼しい井戸水が流れる1.5m巾の壁面が、いろいろな向きに立っているということで、その付近に「場所」が生まれ、それぞれの場所の連続が、少しずつ視線を変えながら連続している、そのようなデザインになっています。天井高さは3.mあることも、この家を何か「住宅ではないもの」に感じさせます。屋根には大胆なトップライトがたくさんあいているので、ついつい上を見上げてしまうので、これは「明るい気持ちにさせる家」かもしれない、と思いました。

 トップライトには、夏は「すだれ」を外から載せるそうですが、そういうローテクな作業も、建て主の方にとっては楽しい体験のようで、とても満足そうに住み心地を語っておられました。  家の中にいるのか外にいるのか、わからなくなるような、開かれた感覚をつくりながら、温熱環境としての快適さを守っている、というのは、本当に秀逸な設計だと思いました。


外観。構造の柱壁が屋外にも連続しています。





2010/03/31 ちょっと見(み)ではわからないものごと ~リノリウム床材のおはなし

皆さん、リノリウム床材というのはご存知ですか?

病院などでよく使われていて、ちょっと見ただけではビニールと似ているシートで、ありふれた材料だなあ、と思っている方が日本には多いようです。昔の人は学校で使ってたような記憶がある、貧しい時代の床材だな、とか、日本人は、どうもリノリウムと聞くとネガティブな印象を持っておられるように感じます。学校建築でもいまやフローリング全盛。天然木だったら自然素材だし、エコロジーっぽいって感じてませんか?

 欧米では、フローリングはそれほどエコロジーで使いやすい材料だとは考えられていません。なぜなら、建築界の安い天然木のフローリング嗜好が、中国などの森林破壊を促進している、と考えられているからです。国産材か、FSC認証森林から切り出した材料ならOKですが、そういう材料はそれなりの価格になります。日本で出回っている無垢フローリングのほとんどは中国から輸入されていて、違法伐採や安い賃金をもとに生産された材料である可能性が高いのです。

価格が安いということは、いったいどういうことなのか、疑ってみる必要があります。

 リノリウム床材は、比較的安価であり(4000円/㎡程度)、環境に負担をかけない素材です。原料は亜麻仁油とコルク粉、木片など、完全に天然な材料だけでできていますので、廃棄しても土に帰ります。材料の亜麻は生長が早い草で、伐採してもまた生えてくる、というわけで、自然破壊にもつながりません。


リノリウムメーカーのパンフレット

 見た目がビニールシートっぽい、というだけで敬遠されがちなリノリウム。ビニールシートは化学合成物質で、微量ながら化学物質を発散しますが、リノリウムは、地球にも人にも完全にやさしく安全な材料なのです。

表面的なイメージや値段で判断しないで、材料の素性や、背景にある意味を読み込んでから、判断して、選択できるようになりたいですね。







2010/03/23 蓄熱式床暖房のすすめ~夏と冬の快適さを実現すること

家づくりのなかで、どこにお金をかけるかのバランスはとても大切ですね。広さが大切な人、キッチンやお風呂など機能性が一番大切だと思う人、仕上げ材には本物を使いたい、耐震性能に防犯性にこだわる、それぞれごもっともです。設計するということは、その方にとって一番大切なことを、あぶり絵のように浮かび上がらせていく作業だと思っています。
本人も気づいていないかもしれない「その人にとっての大切なこと」をコミュニケーションの中から汲み取って、新しい生活のあり方を提案して、幸せな生活を実現する、ということが仕事です。その際、「優先順位をつけること」は、本当に質のよい家で、コストパフォーマンスの良い家づくりに、とても大切なことです。

 さて、建築家として家づくりの相談を受けるときに、私が作る家は、部屋を壁で分けるのでなく、家の空間全体がのびやかに連続していることを大切にしています。外部にも部屋のような空間、中庭やバルコニーがあって、中とがつながって、広々感じられる空間をデザインするのは、家作りの基本中の基本です。


輻射式床暖房を設置した相模湖東の家。

夏も冬のエアコン無しですごせるそうです。
 そのような空間をつくることは、風通しもよく、日差しもあちこちから入ってきて、夏の快適さをつくるのは簡単です。

 ところが、逆に冬の寒さを防ぐのは、ちょっと別のアイデアが必要です。冬は、狭い部屋でストーブをたいたりコタツに入ってじっとしてるのが一番暖かいというのは事実。でもそれでは、あたりまえすぎてつまらないですね。
 冬の暖かさは、まずは日差し。太陽光を最大限取り入れる窓をデザインすること。それにプラスして「夜間蓄熱式床暖房」を建築として取り入れることは、かなり優先順位を上げて提案しています。
 費用は60万円~100万円程度の初期費用で、家全体を足元から快適に暖めてくれて、夜間電力をつかって土間床全体に蓄熱することができます。
エアコンのように風もなく、家の構造(壁や天井、床)に熱をたくわえるので、身体にやさしくもっとも快適な室内環境を実現できます。夜間電力を使うので、家全体を暖房していても、月々のランニングコストは3~4000円(30坪程度の家で)
 無印良品の家で、同じシステムをオプション品としてつけていると聞き、見に行ってきました。
夜間に5時間だけ土間の床に温水を流して蓄熱します。昼は土間に蓄熱された熱だけでふわっと暖かい、を体験してきました。


無印の家外観


吹き抜けがあって開放感の高い設計でした。

厳寒日にはエアコンも併用するそうですが、基本的にはこの土間床暖房だけで過ごせるようです。もちろん、断熱性能もかなり高いことが前提です。
空間の開放性と風の通る家にプラス土間蓄熱式床暖房、このセットが、今の住宅設備のお勧めすです。





2010/03/16 建築の色について考える

先日、都内のとある駅のホームに立っていると、線路のむこうに建つマンションに目が止まりました。なんとなく不思議な存在感があります。

水色とライムグリーンの外壁に、ピンクの手すり、雨どいにもピンク。ドアの色はグラデーションのピンクで、家によって微妙に色が違っています。
   

アップで見るといろいろな色が見えてきました。

「ほー、カラーコーディネート、がんばってたのね。ちょっと渋谷系ファッションカラー(?)というか、アジアの路地的彩色というか・・・。」
良いとか悪いとかはとりあえずおいておいて、デザインした人が一生懸命色にこだわっている心理に興味がわいておもわずシャッターを切りました。

 日本人は色については、それが建築や車になると、とても保守的ですね。先日も「色を使うとすぐ飽きるから、やめとけ、と親に言われました。」とクライアントの若い奥様が口にされた言葉が耳に残りました。

 色は、音と同じように、人の心理に影響を与えるものだと思います。建築は、多くの人の目に長い時間さらされるので、その影響に責任があるということで、家には白とかグレーとか、ベージュとかといった外観に選ぶ人が多いです。
 一方、オランダやチェコなどを旅すると建築は驚くほどカラフルに彩られていることがあり、そこにははちゃんと調和があって違和感がありません。ところが、同じような色で日本の町を再現すると、とたんにオモチャの家のような軽薄な風景が立ち上がります。

  建築の色は、その国の風土、湿度や土の色、植生と密接に関係があると思っています。
樹木の色、空の色と調和するようにしないといけない、ということを人は直感的に知っているのでしょう。

とはいえ、自分は建築を設計するときに色を使うことが、意外と多いのです。


武蔵小山アパートメント

ただし、いつもインテリアのみで、かなり慎重に、日本の伝統色といわれるような微妙な色から選んで使います。 部屋の中に一面だけ色をつける、というのは良く行う手法です。色を塗ることで、部屋が閉じた四角でなくなり、奥行きが出て広く感じる効果が出ます。


うつのみやアパートメント

 ある色を建築に取り入れることで、人を元気づけたり、おだやかな気分にしたり、コミュニケーションが活発になったり・・・。そういったやり方は、コストをかけない建築デザインの手法でもあります。  効果的に色を使う方法、これからも探究していこうと思います。





2010/02/19 建物と地盤の関係~身体をつかって考える

建築をつくるときに、敷地の地盤調査はとても大切です。
建物の重さに対して、土の「地耐力」が十分か確認するためです。

さて、先日の中沢新一さんのアースダイバー でも話しましたが、東京には洪積台地と沖積台地があります。このような土地の歴史によって土地の耐力が歴然と異なります。沖積層の青い部分は昔は海だったり川だったりするので地盤が弱いのです。また、新しく盛土した場所は、雨のたびに地盤が締まっていくので、地表レベルが下がってしまい、結果建物が傾いてしまうなんてことも・・。
地耐力を調査するのは一般的には「ボーリング調査」。保育園の敷地で先日ボーリングを行いました。


ボーリング調査をしている様子。

費用は平均して20万円~30万円程度です。土を掘っていって、地耐力と土の種類を確認していきます。50kN/㎡が5m以上連続するまで掘り続けます。
 一方、2階建て木造住宅の場合は建物が軽い(10kN/㎡程度の重さ)ので地耐力は20kN/㎡~30kN/㎡以上(キロニュートン)あればよい、ということになっています。その場合、スウェーデン式サウンディング試験という簡易な調査方法を使います。これだと調査費用は3万~8万円程度。
 さて、このスウェーデン式サウンディング試験、手軽ですが「地耐力」としては目安程度の結果しか出ません。スウェーデンの結果20kN/㎡程度の耐力でも、掘ってみたらすぐにローム層(関東ローム層の地耐力50kN/㎡)があった、というケースがあります。そのような、古い土地では、スウェーデン式+ハンドオーガーボーリング(土を掘ってローム層のレベルを確認する試験)を一緒にやることをお勧めします。


この赤茶の土がローム層です。

正確な地耐力を把握することで、必要十分かつコストパフォーマンスのよい基礎の設計を行うことができます。

 私の場合、構造計算は信頼できる構造家に外注しています。構造設計はより安全側に設計をすればベターなのは間違いないですが、そのために過剰な費用がかかることはお客様にとって負担になります。そこで、どのあたりに納めるのがよいのか、「コストパフォーマンス」と「安全」のさじ加減は、構造家の「経験」と「勘」によるところが大きい。特に地盤の解釈については意見が分かれることが多いという事を、最近発見しました。これは・・大変悩ましい・・・。

迷ったときは、「直感的にわかりやすい説明ができる人」を信頼することにしています。優秀な構造家の皆様には、ぜひこの能力を身につけていただきたいと思います。

また、基礎を作るための土を掘った底の地盤(=根切底「ねぎりぞこ」と言います)の閉め固めも大きなポイントになります。現場で、閉め固めが完了したときに、土の固さを確認するのは構造家の仕事として重要です。構造家と一緒になって、私も横でガシガシと土を踏んで確認することは、欠かしたことがありません。十年以上も一緒に現場を見ていると、勘と身体が鍛えられ、足下の土が何kN/㎡か、想定できるようになってきました。

建築の仕事、頭より「身体で考える」ことのほうが、意外と多い職業です。





2010/02/12 中沢新一さんと陣内秀信さんのお話を聞く~「東京のみえない力」 

 先日は、JIA建築セミナー に人類学者・思想家の中沢新一 氏と、建築史家の陣内秀信 氏をお招きしてのエキサイティングな対談を行いました。タイトルは「東京のみえない力」。

 陣内秀信氏が1985年に出版された著書「東京の空間人類学」は東京の古い地形、水辺、歴史や自然、人の暮らしを研究され、今現在ここにある都市との深いつながりについて語った東京の空間分析の名著。一方、中沢新一氏といえば「チベットのモーツアルト」をはじめ、軽やかな語り口で人間存在の深部に迫る人類学者です。9.11の深い意味を分析した「緑の資本論」も鮮やかな論理が印象的でした。その中沢氏が、2005年に出版された「アースダイバー」では陣内氏の本と同じように東京の空間を扱いながら、人類学的で、縄文的、宗教的なアプローチで分析したもので、建築関係者や学生の間でベストセラーになっています。

 陣内氏のお話では、地形、水の流れや植生が、東京の都市の骨組になっていて、それはヨーロッパやアメリカの都市のグリット状に人為的にデザインされた大都市とは大きく異なる、というお話です。身体的に「ああ、そうだな」、と納得する話ばかりでした。

 一方の中沢氏は、いきなり、人の「心のトポロジー(位相)」の話からはじまります。位相としては、 ドーナツ型の閉じた系と、外部とつながる開いた系。トポロジーの概念では、丸いドーナツも四角いドーナツも、トポロジー的に見ると同じ形、というわけです。

中沢氏のアースダイバー。東京を2色でわけて、古くからの「洪積台地」と水際を埋め立てた沖積大地が複雑に入り混じる縄文時代の地形を再現したアースダイバーマップを見せてくださいました。


アースダイバーマップ。白いところは洪積台地です。青は沖積台地。

分析によると「水際」と「台地」の境界部分に、神社や古墳、縄文遺跡などが集中しているそうです。そのような境界には、弥生時代に多くの墓がつくられ「森」があったと考えられています。「水」はあの世とつながるもの、「森(死者のいるところ=亡霊(もうり)が語原?)」は、あの世とこの世をつなぐ結界の役割を果たしていたとか。そこに現在の神社や寺院がつくられているようです。地形と森、水、それらが持つ宗教的意味や人類学的な背景を聞き、近代が失った「場所」の意味、人の意識が放つ場の力について考えさせられました。

都市や建築を作る際に、そこにある「みえない力」を把握しながら、「流れ」をつくりだすことが理想です。経済価値や利潤を追求した再開発も、やり方を見直す時代になっていると感じます。
貨幣や数値に変換できない、物語や意味にあふれるワンダーランドのような東京という都市。見えないものの探求は、とても楽しいですね。



2010/02/06 写真家 都築響一さんの話を聞く~リアルの探求 

先日、JIA建築セミナーに、都築響一 さんをおよびして、講演をしていただきました。タイトルは「東京のリアル・都市の未来」のはずが・・・。

都築さんといえばBRUTUSの編集の仕事を辞め、1990年代に「TOKYO STYLE」を発表。6畳一間とか2DKとか、そこらへんのアパートで暮らしている人たちの、モノのあふれた、部屋の中を撮って写真集にした写真家で、ジャーナリストです。
「雑誌には、建築家達がつくるカッコいいモダンな家ばかりが出てるけど、大部分の日本人はそんな家に住んでいない。日本人のリアルな生活はこっちだよね!」ということで、味のあるキャプションとしみじみと見とれるような写真で当時の若者を魅了しました。
さて、経済不況建築業界かなり元気がない、ちょっと異次元の都築さんの話しを聞いてみよう、と、お気楽な気分で企画したものの・・・なまの都築さんは強烈でした。
最近「東京右半分」 というコラムページを立ち上げ、東京の右側、台東区や江東区の前衛?を精力的に取材しておられるようです。人に言えない「恥ずかしい」と思う、裏の趣味、アダ○トも徹底すれば超前衛アートにも見えてくる?とか、何の意味もない(ように見える)ことに全身全霊をかけている「マイナーな変な人」が、偉大な人も見える?

 話の中で、「東尋坊」から、毎日飛び込みをやっている「どりゃーおじさん」を紹介してくれました。「東尋坊」といえば、泣く子も黙る断崖絶壁。自殺の名所として毎年飛び込む人が後を絶たない、あの場所です。そこに、毎日、黄色のビキニパンツを履いて「ドリャー」と叫びながら飛び込み、その後自力で崖を這い上がってくる、そして、また飛び込む、を繰り返しているおじさんがいたそうです。飛び込む回数を生きがいにしていて、2万回を超えたそうですが、そのうち椎間板ヘルニアになり、ドクターストップがかかったとか。インタビュアーに「なぜそんなことを?」と聞かれて「男のロマンですかねえ」と真面目にこたえる中年の男性。

 すごいたくさんお金をもらって、「やりたくないこと」をやるか、お金はあきらめて「好きなことだけやるか」という人生の選択肢は、誰にでもあるとして、都築さんは堂々と後者を選択した人でした。そういうときは、「東尋坊」から飛び降りるようなもの。それには、「周りの人の反対を聞かない体力が必要」、だそうです。飛び込んだ人には、本当に醍醐味のある人生が待っている・・・? 経験した人しかわからないでしょう。

普通の人、無名の人たちへの「愛」があふれた講演でした。人間存在に対する全肯定っていう感じ・・。抱腹絶倒のなか、いつの間にか禅寺で仏法でも聞いているような気分にさせる語り部ぶり、本当に面白かったです。



2010/02/01 信じるのはどっち?~珪藻土建材の性能について 

最近のクライアントの方にアトピーにお悩みの方がいて、お住まいのマンションの空気が原因では、という推論しています。その方は、しっくい壁のご実家に帰ったときや、海外ではアトピーが軽くなるそうなのです。最近はシックハウス予防条例もできて、建材が安全になったと言われますが、身の回りの建材には少量ですが化学物質は含まれていて、シックハウス症候群、アトピーを発症する方もいるのだ、ということを知りました。
さて、どうしても有害物質がゼロにならない環境を改善する素材として「珪藻土」というのがあります。珪藻土は、湿気やにおい、空中の有害物質を吸着して分解する機能を持っています。この方には珪藻土の壁や天井をぜひお勧めしたい。
珪藻土の塗り壁、今回は気合を入れて本当によい珪藻土を探そうと決意!まず、吸湿性能 ㎡あたり何グラムの水を吸湿するかのグラム数を確認すること、これなら安心。あと、固化材は安全な海草系の糊を使っている、等、自然素材にこだわっていること、等・・・。珪藻土は何%入っているか、も確認!!数字のデータを見るのは安心感があります。老舗のS社はきっちりとしたデータがカタログに出ています。
 ところで、日本珪藻土建材のエコクイーン という製品。前からよく使っていたので、この会社に電話して「珪藻土の含有量はいくらですか?吸湿性能は何グラムなの?」と質問したところ、「そのようなデータはつくっていません。そのかわりお客様の声を読んでください」と言われ、ちょっとムっとしました。「科学的なデータがないなんて、けしからん。ほかのものと比較ができないじゃないですか!」とメーカーの人に文句を言いました。
 ところが、送られて来た資料に添付された「お客様からの感想」があまりの多いのでびっくり。「アトピーがよくなった。」「不眠症が治った」「こどものぜんそくが治った」とか「植物が元気なんです」「100人以上の方の手書きのお礼状をコピーしたものが添付されていました。そして、もちろん材料についての詳しい資料とカタログには、なるほどと思わせる根拠があります。これは確かによいかもしれない、と思わせるものがありました。
 科学的データはわかりやすいですが、人間に対する効果というのは、数値データでつかみきれるものではありません。使った人や動物・植物の感想(これも微妙な話ですが)を聞くこと、場合によってはそっちを信じたほうがよいかも・・・、と思ってしまいました。

エコクイーンをつかったインテリア GARDEN HOUSE

2010/01/27 家庭のなかの電磁波~エコロジーって難しい・・・。 

家の中には、たくさんの電磁波を発生する機器があります。一番気になるのはIH調理器でしょうか?でも。IH調理器は、ここ10年の間に電磁波発生量は、なんと1/100まで低減されたそうです。
技術の力ですね~。とはいえ、至近距離(15cm以内)では強い電磁波(20~40mG)を感知しますので、妊娠中の女性やお子さんは、あまり長時間使わないことをお勧めします。脳に影響を与える可能性があると・・・。

 家の中で一番大きな電磁波を発生する装置で影響が考えられるのは、実はホットカーペットや電気式床暖房です。床暖房は、本当に快適ですよね。でも電気式となると、どうしても電磁波が強くなり(100mG以上)そこに長時間座ったり寝たりすることは、人体に影響がある可能性を否定できないと思っています。

床暖房は、温水式のほうが快適だし、電磁波の心配もありません。料理も暖房もガスのほうがよい?

 オール電化住宅の方も、最近はヒートポンプ式温水床暖房、というものがありますので、そちらを採用することをお勧めします。オール電化については、去年、オール電化についてブログで書きましたが 電気代が安くなっても、電気の使用量がトータルで増えることはエコロジーとしてはマイナスだと思っています。太陽電池をつければOKか、とも思いましたが、太陽電池の家ではインバータ付近では大量の電磁波が発生し、電磁波過敏症になった人がいるそうです。

 あー、本当にエコロジーって難しい・・・。



2010/01/22 目に見えないものを見る~電磁波の人体への影響について 

皆さん、電磁波過敏症という病気をご存知ですか?

 アレルギーや花粉症のように、一旦「電磁派過敏症」になると、わずかな電磁波でも、めまいや吐き気、頭痛、不眠などの症状があらわれるそうです。原因は、低周波の電磁波に長い時間曝されている人がかかるようで、は認知度も低いようです。でも、花粉症と同じように、現代の病気として、そのうち増えていくのかもしれない、と思うと心配です・・。

 電磁波は、電気も光も磁気も、波長を持つものすべてを含んだ広い言葉です。太陽の光も電磁波ですし、地球の磁気もそうです。電磁波そのものが悪い、というわけではなく、波長の長さや変動によって、細胞への影響があるようです。

電磁波で危険なのは放射線はもちろんですが、家庭用電流のような超低周波(50-60HZ)の電磁波でも、強いものに長時間さらされると細胞核のレベルで人体に影響を与えることは、ヨーロッパでは広く認知されています。腫瘍や白血病、精神病の原因にもなるといわれており、高圧線の付近には住宅や学校を作ってはいけないと規制されています。スウェーデンでは、遺伝子や細胞レベルに影響を与えない、安全な電磁波の強さは2mG(ミリガウス)以下、といわれます。実際、私たちの環境はどうなんでしょう?

 子供の施設をつくるのに、安全を確保したいと考え、保育園の計画地のそばを設備事務所のT氏と一緒に、電磁波測定器を持って歩いてみました。

敷地の脇の道路上では0.3mGくらい。近くに電車の高架線がありますが、そこに近づいても1mG以下でした。電磁波は発生源の強さとそこからの距離に大きく影響します。

「普通に歩いている分には意外と小さいですね」、と言いながら、お茶を飲むため、商店街の2階にある喫茶店に入りました。・・・と、いきなり針が振り切れ、なんだこれは!?

見ると、窓のすぐそばに太い電線が何本も走っています。商店街なので、おそらく通電量が多いのでしょう。測定すると10mGぐらいあります。


その場で計れる電磁波測定器です。

こういう、電磁波の強いところには、電磁波遮蔽建築が必要ですね!と、お茶を飲みながらT氏と話しこんでいました。低周波は遮蔽が結構難しいのですが、現在、低周波電磁波でも遮蔽する素材はあるようです。

ちなみに、携帯電話などのマイクロ波はアルミなどで簡単に遮蔽できます。ただし電波は届かなくなります。

長期的に見て、安全で健康な環境とは何かを考えるとき、目に見えないけれども、そこにある「ごくごく微細なもの」をも見きわめて、配慮していく力が、建築をつくるものには必要なのだと感じてます。


喫茶店の窓からみた風景  



2010/01/18 無垢材フローリングのお手入れ 

自分の家の床材は、無垢のバーチ(白木)フローリングですが、お手入れを怠っていたため、5年経ってよごれがだいぶ目だってきました。たまにはお手入れしよう、と思い立ち週末に一念発起。


我が家の床。詳細はこちら

 無垢材といえば、木のナチュラルな素材感が魅力ですから、木の呼吸を妨げない、植物系オイルがよいです。こちらは「オスモフロアクリアー」という床塗装を施しています。 でも、この塗装だと、ちょっとしたお手入れが必要なんです。長年ほっておくとヨゴレがつきやすくなり、なかなか落ちないということも・・。


お手入れを怠った結果こんなにヨゴレが。。。日ごろのお手入れ方法をご紹介します。

普段、雑巾がけをするときは、オスモウオッシュアンドケアーというオイルを、バケツの水にキャップ1-2杯加えて、その水で雑巾がけをします。
   
水にキャップ一杯です。
すると、ヨゴレも取れて木に油分を与えるので光沢や耐久性、発水性が高まりヨゴレ防止にもなります。月に1回程度、行うのが理想ですが、半年に1回くらいでも大丈夫ですよ・・。日常のお手入れと耐久性アップはこれだけで十分。

 でも、ヨゴレがひどくなってしまったら、「オスモワックスクリーナー」という製品を刷り込んで落とします。



どちらも人にもペットにも安全なもので、手袋なしでも大丈夫。ただし、それほど劇的にヨゴレが落ちるというものでもないようです。私の場合4年間お手入れをしなかったため、ヨゴレが定着。なかなか落ちません。こうなる前に、1年に一度はワックスクリーナーでお手入れしましょう!


奮闘した結果、この程度にはなりました。

無垢材のような天然素材は気持ちがよいですが、日常的に少しの手間がかかります。

とはいえ、ヨゴレや傷も味わいになるのが天然素材のよいところ、だと思います。

手間ひまかけるとそれだけ家に愛着もわきますね。

皆さん、建物にも愛情をそそいであげてくださいね。



2010/01/14 アンチバリアフリー論 

猫は高いところが好きですね。 保育園の園長先生のお話ですが、見下ろす、という行為は、脳の発達を促すという研究があるそうです。階段の上り下り、視線の高さの変化は、脳の発達に貢献する、という話を興味深く聞きました。
見下ろすっていいらしい。 先日墨田区にある「うらら保育園」の見学に行ってきました。そこでもわざと保育室内に段差を設けて、1歳児だと10cmくらい、2歳児だと20cmから30cmという段差のある室内をあえてつくっているとのこと。筋肉の発達や脳の発達に、段差や階段が良いというのは、教育で子供の発達を深く考えられている先生方にとって共有される事実なのかもしれません。
 ところで、今の法律や条例で、保育園はすべての部屋をバリアフリーにしなさい、という規定ができました。先日、役所に相談に行ってみたら、やはり例外なくバリアフリーにしないとダメだ、と言われました。
 確かに、車椅子や高齢者にとって、階段というのはバリアになります。でも、幼児や保育士さんすべてに、その基準をあてはめるのは、どうなのだろうか?と思いました。
子供が筋力や脳を鍛え、危険認識力を高める練習をするのに、階段は格好の環境でしょう。子供はちょっとくらい危険でも大事故にならない程度の、バリアーは大切な教材です。どこもかしも段差無しというバリアフリーは、健康な人の体力を奪う可能性もあると考えています。
家の中に階段があれば、人は自然に足腰を鍛えることもできます。高齢者施設は別として、日常的に積極的に階段を上り下りすることが、健康で長生きの秘訣だと思うのですが。。。

  家の中に7つの階段がある「長野の家」



2009/12/07 子供がいきいき育つ場所~「せいが保育園」見学 

今日は、新宿区にある都市型保育園「せいが保育園」の見学に行ってきました。園長の藤森平司氏にご案内いただいて、理念や空間、子供たちの様子を拝見しました。
藤森氏は建築のご出身らしく、ドイツや北欧の幼児教育を学ばれ、日本の幼児教育の問題を指摘してたくさんの本を書かれている有名な方です。子供が自分の力で考え、人とかかわることができるようになるために必要な、保護者や保育士のあり方についてはっきりした理念を持っておられます。
年齢ごとに部屋をわけるのでなく、さまざまな遊びコーナーを用意して子供が「誰と」「どこで」「なにを」するか、自由に選ばせて遊ぶ時間を大切にしておられます。つみきコーナー、絵本コーナー、製作コーナーなど、可動家具でつくられたさまざまなコーナーでおもいおもいに子供が遊びます。ひとりで絵本に熱中する子供、友達と積み木を楽しむ子供、お絵かきをする子供。保母さんや保育士さんの姿はほとんど目に入りません。もちろん、課題保育や一斉保育の時間もありますが、私が見たのはお昼ご飯前の自由時間なのでした。
ユニークなのは「PEACE TABLE」というコーナー。けんかやいざこざがあったら、そこに集まって子供同士話し合って解決する場所、だそうです。「自分のことばで気持ちを伝えよう」と書いてあり、その前に子供が3-4人集まっています。泣いている子供と、冷静に話しを聞く子供、友達の頭をなでるおませな女の子。何を言っているのか、意味はよくわかりませんでしたが、子供同士が緊張感に堪えながらコミュニケーションしている風景に新鮮な感動を覚えました。
PEACE TABLEで話し合う子供たち 
もうひとつ、3歳~5歳の年長さんのお昼ご飯。まず、子供たちでテーブルセットをします。綺麗なテーブルクロスと真ん中に生の小さいお花をかざります。厨房から運ばれたご飯をよそう係りの子供が前に立って給仕をします。立派に仕事をする子供たちは、とても生き生きとしていて自信にあふれています。
 

「安全」と「殺菌」という大人たちの過度な不安によって作られた檻に閉じ込められた現代の子供たち。そこから解き放たれたとき、もって生まれたたくましい身体能力と、自信に満ちたコミュニケーション能力を発達させることができる、という可能性にふれました。ここに来ると、最近問題になっている発達障害の子供が劇的に直ったりするそうです。子供たちは本来とてもたくましい。大人が見方を変えさえすれば、子供は大丈夫なのだ、という希望の光を感じました。




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