建築コラム|デザイン住宅は東京の田口知子建築設計事務所

田口知子建築設計事務所

建築コラム

2012/10/23 9年経った「Panorama House」 訪問

先日曜の午前中、横浜で9年前に竣工した「Panorama House」 にご訪問してきました。

設計当時の幼稚園生だったお嬢さんも来年高校生。個室をリフォームしようかというご相談も兼ねて、久々にお伺いしました。

 家主のOさんは、生活を大切にされるご夫婦で、庭の敷石もご自分で施工されたり、奥様の趣味でたくさんの植物、バラやコニファーが元気に繁茂していました。新築時には2mくらいだったささやかなヤマボウシの木は、2階の屋根を超えるほど生命力のあふれた姿に成長していました。


家の中は当時とほとんど変わらず、とてもきれいにしまわれていました。  テラスにはブラックコーテッドリトリバーのマリちゃんがくつろいでいました。


黒くて大きいので、ちょっとびっくりしましたが、とてもおだやかで人懐こい犬でした。マリちゃんは、8歳のメスですが、黒くて大きいので、お客さんはすぐ「オス」だと勘違いするそうです。わたしもすぐに「まり君」と呼んでしまいそうになりました。人間というのは、本当に思い込みの強い生き物であるなあ、と実感。 「メスなので性格もおだやかで、よく見るとやさしい顔をしていますよ」とOさん。とてもかわいい犬でした。


「よく朝ごはんを食べます。バーベキューもするんですよ」というパノラマテラス。
10年近く経った家を訪問するのは、設計者として緊張する体験です。生活の歴史も含め、さまざまなお話しを伺うことは、設計の欠点や、素材の特長、問題点などとても現実的な認識に向き合うことになるかたです。


 西日の問題や通風窓の配置などさまざま問題もあり、それは真摯に受け止め、学ばせていただきました。それ以上に、ご家族が生活を大切に、家の手入れをされつつ、幸せそうに住んでくださっている様子を拝見するのは、とても幸せなひとときでした。

10年前のものも、詳細図など手書きスケッチを事務所に保管しています。西日よけを庇に取り付けられるか、という相談にも、図面があれば答えることができます。
 9年を経た図面を見ながら、設計の仕事に新鮮な喜びを覚えました。


中庭のヤマボウシは2階まで成長して日陰をつくっていました。庭の石はご主人様施工。





2012/09/25 風が吹き抜ける家~「玉川学園の家」竣工写真の撮影を行いました。

先週の土曜日、半年前に竣工した「玉川学園の家」の竣工写真の撮影を行いました。

朝早く起きてみると雲が厚く、今にも振出しそうな天気・・。残念。でも、建て主さんの都合やカメラマンの予定を調整するのに1か月以上前からの約束だったので、晴れ間が出るように祈りつつ決行することに。

 玄関先のジューンベリーをはじめ、シルバープリペット、キンシバイがわさわさと成長し、自然風というか、野性味があって、良い感じ(?だと思いますが)です。


北側の玄関アプローチの写真です。

 家に中では、どこに立っていても風が吹いてくる感じの、なんとも言えない心地よさ。

2階の部屋がばらばらに分かれて宙に浮いているような設計で、部屋の隙間の吹き抜けを通って風の抜けが感じられる空間です。


建て主のYさんは、設計当初から「風」にこだわって勉強もされていたので、窓の位置は一緒になって慎重に決めていきました。そんなふうに、何かを期待して設計し、結果を体験するのはとても楽しいことです。


 ちょっと空間が複雑に見えますが、立体的にお互いの存在を確認でき、居場所のある、ユニークな家で、Yさんもとても満足しておられる様子でした。

 午後には、突然青空がのぞき、日差しの感じられる写真も何枚か取ることができて、本当にうれしかったです。


 ダイニングの窓から見える隣の家の樹木が借景になって、とても美しいです。

 建て主のYさん、カメラマンの藤井さん、ありがとうございました。



2012/09/21 スタジオ・ムンバイ展~触れて体験すること

今日は、ずっと見たかったスタジオ・ムンバイ展(ギャラリー間)に、やっと行ってきました。
人も多かったですが、とにかく想像以上の展示方法とその空間にびっくり。ギャラリーの中にいるとは思えない、どこかの製作現場に来てしまったかのようなリアルな創作の息吹を感じる体験でした。


スタジオ・ムンバイはインドで活動するビジョン・ジェイン氏率いる建築集団。


スタジオ・ムンバイ ワークショップのメンバー写真
ワークショップには建築家だけでなく、大工、石工、カラーアーティストなど、その手で現物を作り上げる職人さんも含んだ大集団の建築事務所です。

モックアップで原寸をつくったり、模型を作ったり、その同じ人が現地の工事を行う構造になっていて、インドの生活文化に溶け込みながらデザインし、考え、作り、生活することすべてが、同時に仕事の中に同時存在している建築事務所です。そして、作っている空間が本当に美しく、洗練されていて、自然と調和したものであることは、そのプロセスすべてが影響して作り出しているのだと、納得できるデザインです。



今回の彼らの展示物には「触るな」マークが全くついていない。「触ってOKマーク」「座ってOKマーク」が貼ってあって、来場した人が自由に机に座り、彼らの作った机といすを体験しながら手づくりのデッサンノートや写真集を眺め、現物の素材を確かめることができるようになっていました。まさに、職人の世界の実体験。



スケッチノートは、緻密なディテールのスケッチが大量に表現してありましたが、日本のようにアイデアを生むのノートではなく、重要なコミュニケーションツールなるそうです。インドでは、文字の読めない職人もいるため建築図面では伝わらないことが多く、部分をパースやアクソメに起こして伝えることが効果的だとか。
 形式化された冷たい図面ではなく、人の素直な感性に寄り添った図面表現というものが大切だと思いました。


インドの町の日常風景を動画で流しているコーナーやたくさんの写真に写るインドの生活や自然環境もリアルに感じられる展示です。 インドに行ってきたような、とても親密な空間体験と、創作の喜びを感じて元気をもらって帰ってきました。

展覧会は明日までです。もしまだの方がおられたらお忘れなく!



2012/07/21 「玉川学園の家」半年点検~窓が作る物語

今日、竣工して半年ぶりに「玉川学園の家」をご訪問させていただきました。

道路側からの外観。ジューンベリーがシンボルツリーです。


キンシバイとアジサイが咲いています。 庭の植栽は、どれも元気に、賑やかに成長していました。ちょっと野性味もあっていい感じです。
さて、今日は、リビングの階段の集成材が反り返ってしまったというトラブル解決に来たのでした。本間建設の渡辺さん、大工さんとで原因と対策を検討しました。階段をあけてみると、土間と階段の間に湿気がこもって抜けなくなっていたようで、階段の床板の裏側の含水率25%、表は10%。この差が床板の反りに影響したようです。下地を作り直し、蹴り込みに通気孔をあけて仕上げることにして様子を見ることに。こういう手間のかかることでも丁寧に対応してくれる工務店は、本当にありがたい存在です。


床板をはがしてみました。 こんな不具合もありながら、住まい手のYさんは、半年住んでみての感想についてとてもうれしそうにお話してくれました。


奥様いわく「階段がたくさんあるので、子供がいろいろなところに座って本を読むんですけど、どこにいても本当に楽しいです。冬の雪の日にあの階段に座って、ずっと外を見ていました。ダイニングの高窓も、本当に最高の位置についていて、隣のハナミズキや月が見えることもあるんですよ。」


ダイニングの細長い高窓。この高さと位置は自分としてこだわったところです。隣の家の緑を借景にする計画です。


みんなの書斎でパソコンをいじっているS君。窓の外の緑は玄関のジューンベリー。

 「冬は蓄熱床暖房で、家全体がとても暖かいんです。夏は風通しが抜群だし。快適ですねえ。」と旦那様。
 風の抜けを考えながらデザインしたのですが、南から北ではなく、道路側の北から南に、上から下に風が吹いてくるのがちょっと予想外。風の流れ方について、もう少し勉強すべし・・・。
予想外のことは起きますが、なにはともあれ、住まい手の嬉しそうな言葉を聞くことが自分にとっては最高の喜びです。

工務店さん、Yさん、本当にありがとうございました。



2012/03/05 キッズタウン東十条保育園 竣工して一年がたちました。

今日、キッズタウン東十条に行ってきました。昨年3月の竣工以来、一年がたちました。
初めての卒園記念のパンフレットの中に、建築家の文章を寄稿してください、というありがたいお話をいただき、園の子供たちの様子を拝見しようと、ひさびさにお邪魔したのです。

 夕方4時はお母さんが迎えに来る時刻。1階の玄関は大賑わいです。


 玄関を見下ろす窓には子供がのぞいています。
いつ来ても、この窓から子どもがのぞく姿を見られるので、おなじみの光景。


 階段を大騒ぎで駆け上る子供たち。


0歳児でも上り下りするという、みんなの遊び場でもある階段。

保育園にこんなに階段が多いことは、長年キャリアのある園長先生も初めての建築だったそうですが、この一年、子供たちは誰一人けがをすることもなく、階段が遊び場としてにぎわっているそうです。

ふと見ると、2階の年少さんの幼児室の窓に子供がはまっています。

子供にちょうどいい大きさ、高さで町を眺める窓がいろいろあいているのです。

保育園はオープンして初年度は赤字になるといわれていますが、この保育園は、初年度からかなり黒字になったらしく、経済的な余裕もあってか園長先生はいつも大満足の様子で、子供たちの日々の様子をうれしそうに語ってくださいました。いろいろ追加工事も頼まれて、設計者としては一安心の保育園風景でした。

みなさんに愛されて使いたおされている建築を見るのは、私の一番の幸せです。




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