建築コラム|デザイン住宅は東京の田口知子建築設計事務所

田口知子建築設計事務所

建築コラム

2013/12/18 「祖師谷大蔵の家」 上棟しました~木やり歌、初めて聴きました

昨日、良いお天気に恵まれた中、祖師谷大蔵の家は、上棟しました。

一日で一気に木造の柱梁をくみ上げる「建て方」は、大工さん、鳶職のみなさんの独壇場です。大勢の職人さんが集まって小気味よく作業を進めて、きっちり上棟しました。


夕方には、建て主のYさんが上棟式の宴を用意してくださり、活躍した職人さんたちをねぎらってくださいました。暖かいトン汁などもふるまってくださり、仕事の後の楽しいひとときを過ごしました。


工務店は本間建設ですが、大工さんの質が高く、信頼できる下請けさんに囲まれているな、という印象です。今回も基礎工事から建て方まで、とても丁寧な良い工事をしていると感心しました。

また、上棟式の席で鳶の親方が「木遣り歌」を美声で披露してくれました。私は初めて聞いたのですが、みなさん木やり歌というのをご存じでしょうか? 木遣りとは日本の民謡の一種で、大きな石や木材を運ぶとき声をあわせて歌う労働歌の一種です。各地でいろいろな歌に変化して伝わっているようで130種類くらいの歌があるそうです。このような労働歌が現在に引き継がれ、聞くことができました。
歌ってくださったのはエグザイル似のイケメンの鳶の親方ですが、彼は労働歌としての木遣り歌を伝承する活動をしているそうです。

彼の歌を聴きながら、昔から皆で一致団結して働くことの、喜びの原点のようなものを感じました。伝統といっても、格とか流儀を超えた、労働者の歌というのは、なつかしいような切ない感動を呼び起こします。



2013/09/07 キッズタウン東十条フェスタ~一日こども美術館

私たちの事務所で2年前に設計監理しました「キッズタウン東十条保育園」で、本日「キッズタウン東十条フェスタ」が開催されました。私もお招きいただき、今年も行ってきました。


保育園の中、いたるところに子供たちが作った絵やおもちゃなど、さまざまな作品が所せましと並んでいました。保護者の方や地域の方にも見ていただけるように、園を解放して様々なイベントを行う恒例の行事です。


この園では、アート作品づくりや、リトミックなどの体育など、のびのびと遊び感覚で創造性を育てる教育がとても熱心に行われていて、さまざまな講師の先生や大学の先生などが定期的にワークショップをやっています。その成果を、こうやって保護者の方や地域の人に見てもらう機会をつくることを、恒例行事としてやっています。園長先生の人柄と人徳がなせる、「開かれた保育園」が完全に根づいています。

子供の作品を、丁寧に作品にして展示するのは、講師の島田さんと保育士さんのクリエイティブな共同作業です。ほほえましくて、元気になります。


階段にはロボットの作品が。完成度が高い。

夜は、地域の方と関係者が集まって、恒例の屋上夜涼み会です。生ビールもサーブしてもらって、三線の演奏や本部長のギターなど、いろいろなアトラクションも飛び出して、屋上ビアガーデンは大盛り上がり。

園長先生と一緒にみんなで踊ったりして。

地域に根付いた保育園は、夜こんなふうに屋上宴会を催していても、まったく苦情もなく、近隣の方に承認されていることがひしひしと伝わってきました。
保育園という場所が、大人にとっても子供にとっても、夢と希望を与えるオアシスのような存在になり、町を潤していく可能性なんだなあ、と思い、「キッズタウン東十条」に来るたびに本当にほのぼのと幸せな気持ちになります。
保育園のみなさん、素敵な一日をありがとうございました。



2013/08/27 府中ソーラータウン~公園の中に住むような分譲住宅

昨日、府中ソーラータウン の見学会に行ってきました。設計は野沢正光氏で、東京都都市整備局が計画した事業です。「長寿命環境配慮住宅モデル事業」として、都の土地を民間に売却し、相羽建設が計画から販売まで行った16戸の分譲住宅です。


町全体をパッシブデザインとすることをコンセプトに、中心に公共性を持ったみんなの街路を計画し、風の道兼住民の共有散策路になっていることがポイント。もちろん住宅は高断熱の創エネ住宅で、太陽光パネルとOMソーラーをすべての屋根に載せています。
 日本で4軒目?のLCCM住宅(低いライフサイクルCO2発生)を取得したとか。電気代は、一般の住宅の12%程度。太陽パネルの発電と、OMソーラーによる100%に近い豊富な給湯量によって、ごくごく低いエネルギーで快適に生活できる住宅になっています。


 今回おもしろいと感じたのは、「地役権」という民法上の権利についてです。分譲住宅は個人の敷地を分割して販売することで所有地が明確であり、道路か個人私有地かに分かれてしまいます。
 しかし、この住宅では「地役権」を使って、分譲時のルールの中で取得土地の1/15は住民の共用部に供する、というルールを唄って販売することで、私有地の中に共有の街路を持つことができているのです。


私有地を共有してできた「園路」と呼ばれる通り抜け路地

 日照、通風、コミュニティーの活動などを行う公的なスペースを生み出すことができるということです。
また、隣地との境界も塀など立てずオープンであることにより、自分の土地だけでなく借景的な中間庭が発生しています。


隣地の間に境界線はありません。見えない境界線は小さなブロックを配置するだけです。

私有地か公共地か、という2者択一ではなく、「シェアする土地」という感覚は分譲地ではなかなか存在しませんが、戸建て住宅の開発としてこういうことを仕掛けることに本当にデベロップメント(土地の再開発)の面白さがあると思いました。



2013/07/16 LIVES 8月号に「3世帯8人家族の家」が掲載されました。

7月13日発売のLIVESに、昨年竣工した「3世帯8人家族の家」 が掲載されました。


「子供と暮らす家」という特集テーマで取り上げられています。この家の作品紹介の後に、「子供と暮らす家のQ&A」という4ページのインタビューも載せていただきました。過去の家づくりで考えてきたアイデアをいろいろしゃべっています。

御両親と姉妹の各世帯が3世帯それぞれ生活空間を持ち、子供書斎と階段、玄関、シャワー、浴室を真ん中の共用部に配置して、3家族のつながりと適度な距離感、プライバシーを両立させた住宅です。

家の前で記念撮影。玄関は120cmの大型引き戸。ガラス梁の向こうは共用の階段室です。

竣工後一年たって取材に同行して、ご家族が本当に楽しそうに、非日常的な遊びごころを満載して暮らしておられる様子をみて、「ああ、こういう暮らしが、子育てする家族や、老夫婦の理想の生活スタイルなのだなあ・・。」と実感しました。
 というのも、姉妹のお子さんはそれぞれ男の子と女の子で仲良しです。二人とも小学生ですが、家に帰ってくると大人がだれか待っていてくれておやつやごはんを用意してくれる安心感。3つの家をぐるぐる回る子供はのびやかで幸せな笑顔をふりまいています。


 共用部にある子供書斎で、2世帯の子供が一緒に勉強します。窓の向こうはお姉さんの世帯のキッチンです。

 姉妹のご家族は、2世帯の間にあるテラスで毎週「外ごはん」を楽しんでおられるそう。パンケーキを一緒に食べたり、バーベキューやベーコンづくりなど、非日常なアウトドアライフを日常化してしまっているのが素敵です。
 お姉さんが明るく、クリエイティブにリーダーシップが発揮する人柄で、家族皆の信頼関係があることが、このような生活が成立するポイントだなあ、とも感じました。家というのは、やはり「人」がつくるもの。器(建築)のできることは限られています。
とはいえ3世帯で住む、というと大きな家に見えますが、延床面積178㎡です。プライベートと共用ゾーンを組み合わせて暮らせるので、プライベートな部分はそれぞれ45㎡程度でも、のびのび暮らせる家作りを低予算で実現することができるが可能になりました。そこは、建築家としての「技」です。

妹さんの生活空間。キッチンとリビング、寝室と子供部屋を立体的に重ねて視線の抜けをデザインしています。


お姉さんの世帯のリビング。奥には2世帯共用のバルコニーがあります。

取材を通して、集まって住むということの魅力と可能性をあらためて再発見した一日でした。こんな素敵なご家族にめぐりあい、設計に携わることができたのは幸せなことでした。

Yさん、Mさん、取材協力ありがとうございました。

photo by:中村晃



2013/07/13 「広い家」と「共同の家」~東京大学新領域の設計課題

今日は、東京大学新領域創成学科の最終講評会でした。非常勤講師として設計を教えています。出題は大野先生・清家先生の出題でタイトルは「広い家・共同の家」というテーマです。


郊外の一戸建て住宅地にスポットを当て、これからの少子高齢化社会を迎える住まいとして、郊外の家を再認識し、共同で生活を支えあうシステムを提案することで、実際の郊外住宅地に新たな住民を呼び込むことができないか、という課題です。 実際に、柏市花野井「柏ビレッジ」に、区画も含め宅地全体を設計しなおす、という課題です。柏ヴィレッジに住まわれている住民も傍聴され、タイムリーのニーズのあるテーマだなあと思います。学生たちの課題発表をとても楽しみにしていました。
設計内容は、だんだんよくなっていましたが、一番問題なのは実体験としての問題意識です。東大生には、現代の郊外住宅地の状況や高齢化した住民の意識にはリアルな接点がないらしく、核家族形態を信頼していて、単なる世代交代の話になってしまう作品が多いのにはびっくりしました。彼ら学生が、おそらく恵まれた明るい家庭環境にいるせいなのかもしれません。
設計課題をやっていると、人の生きている世界によって、見える世界は本当に異なるもので、同じ世代の建築家でもその人の仕事の状況や環境によって見える世界がまったく違うんだなあ、と感じることがよくあります。正しい回答は無いですが、その中でも自分の立ち位置を決めて発言しないといけないのが難しくもおもしろいところでもあります。
私たち講師が試行錯誤しながら講評した後、最後に住民の方がおしゃっていた言葉がとても印象的でした。

「私たちは、みなさんの提案しているようなすばらしい郊外住宅に住んでいますが、ずっと家にいると気がくるってしまう。私たちは非日常なものを求めています。六本木でストレス解消してます。」とか、「今町では、高齢者の独居老人が増えていることが一番の問題なんですよ。それをなんとかしてほしいということ、ここに若い人を呼び戻すアイデアを提案してくれればねえ」といった住民の方の意見は最高だなあ、かなわないな、と思いました。

設計にこういうリアルな意見を聞くことと、同時にゲリラのように、先生の期待や今ある現実を飛び超えて、意外性とパワーのある設計を提案してくれることを学生さんたちに期待しています。

有意義で、とても考えさせられる時間でした。



2013/04/11 木造5階建て「下馬の集合住宅」上棟見学会に行ってきました。

先日曜日の午後、小杉さん、内海さんの建築ユニットKUSの下馬の集合住宅の見学会に行ってきました。


5階建ての耐火木造の集合住宅です。
設計期間は、なんと2004年からで、かれこれ10年月日が経っています。大学自体の研究室の後輩でもある小杉氏がこのプロジェクトについて、OB会でお話しされていたのを聞いたのは5年くらい前だったかしら?いつ建つのですか?と時々経過報告を伺いつつ、いまかいまかと楽しみにしていました。



ついに、建築工事が始まって、上棟、ということで、私も他人事ではなく、うれしくなって、勇んで見学会に参加させてもらいました。ここまで時間がかかったのは、なんといっても、都心で木造5階建て、集合住宅という特殊な要件によるもの。2階から5階までの住空間を木造とし、主要構造部の柱、床、屋根に一時間耐火を取得するため、新たに国土交通省の大臣認定を取得という、壮大な耐火木造の実現実験でもあったからです。

そして、内部空間は、まだ床や屋根の木造が被覆されていない状態で見られました。これが床の断面ね、と素朴に感動します。柱と床の受け材には既製品の金物を使っているそうですが、スマートです。

床や柱はこれから耐火被覆の石膏ボードが貼られてしまいます。


見えるのは、横力を受けるラチス状のブレース。

水平力を伝える随所には、鉄骨の約物を使っていて、スリムに納まっていますが、大変な高技術、高コストの工事であると感じます。(笑)
なぜ、ここまでして木造?という疑問はもっともですが、海外では木造耐火建築はかなり普及しつつあります。
 RCや鉄骨より比重か軽く人の手による工事が可能、木密地でも耐火建築が建設可能、環境負荷(LCCO2)が少ないなど、いろいろな意義があります。
個人の設計事務所で、ここまで新しい試みを実現したということ、長年の努力と情熱に、あらためて感動と尊敬を覚えます。本当に、おめでとうございます。

完成を楽しみにしています。



2013/03/28 木と対話する家具屋さん

青山にある「家具蔵」は、無垢家具の制作販売をしている家具屋さんです。

今リフォームしようと考えているI邸のキッチンを、無垢材のキッチンにしたいという要望があり、クライアントと一緒に家具蔵のショールームに行って打ち合わせをしてきました。



さて、ここの営業部長さんの三上氏は、とてもユニークな方です。無垢の木には、さまざまな樹種がありますが、ひとつひとつの木の性格を、「個性的な人」のように擬人化して紹介してくれます。彼の木に対しての、並々なら愛情のこもった語り口は、ちょっと不思議な世界に引き込まれる体験です。
 「サクラは、とてもお茶目な女の子なんですよ。AKBみたいな感じですかね。ちょっとおっちょこちょいだけれど、さびしがり屋でちやほやされたい。あわてもののところもあって、キュッてのどをつまらせるから導管にこうやって黒いスジが入るんです。」とか。「ナラは昔の日本のお母さん、という感じですかね。すべてを抱擁して動じないですよ。」とか・・。


木の性格を説明される三上氏

   厚く挽いた無垢の板材を見ていると、本当に木の細かい肌理の違い、模様の豊かさを実感するのと、生き物としての個性を感じるのも、楽しいことです。


お茶目だといわれたチェリー。

 木と対話することは、より深く自分の世界の身近にし、愛情が深まることで仕事をより深く楽しむこともでき、良い仕事をすることにもつながるのだと思います。家具蔵の家具は、無垢木の特長を生かしたナチュラルで落ち着いたデザインで、そのクオリティのわりに価格も抑えれられているので「職人気質の良心的なお店ね」と、クライアントのIさんも感心しておられました。
 本質的な部分を大切にする仕事、というのは、働く人もお客様も、両方を幸せにするなあ、と感じました。



2013/03/12 「キッズタウン東十条」が「作品選集2013」に掲載されました。

日本建築学会が主催する、「作品選集2013」に私たちの設計した「キッズタウン東十条保育園」が選抜されました。


 初めて応募しましたが、選抜にあたって審査員の建築家の方が候補作品を現地で確認し、とても丁寧に審査してくだいました。雑誌の紙面や写真だけでは伝わらない、建物のニュアンスは、使われてから1年以上建ったものとして現地を見ることで、その建築の質は確実に評価できるレベルになるのだと思います。そのような選考方法を取る学会の審査の方法に信頼を覚えました。
 選抜されて掲載された100作品を見ると、どれもオリジナリティや造形性、建築的な感性度においてレベルの高い作品で、自分のものがその中に選ばれたことは光栄な気持ちがします。
モノとしての建築の新しさや完成度の高さと、人や社会に影響を与え、幸せにする力、そのどちらの軸を持つかというと、後者のほうに興味が偏っている感がありますが、作品としての建築を作ろうとするクリエイティブな情熱も素晴らしいことだし、自分にはまだまだ足りない部分として鍛錬しなくてはと思います。
 そして、伊東豊雄氏が先週の日経アーキで語っておられた、「作品という概念はもう消えたほうがよい」という言葉にも深く共感すしました。プロセスを重視しつつ、真に社会のニーズをくみ取って対話しつつ、未来に必要とされる建築を作ることのできる建築家というのは、とても興味深いテーマです。作品性への情熱は逆にマイナスに働くかもしれない、ということも受け取めて、考えてみたいと思いました。




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