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日本的なエコロジーとパッシブデザイン~小玉祐一郎氏に聞く環境建築 - 2009/12/07
子供がいきいき育つ場所~「せいが保育園」見学 - 2009/11/06
暗さを大切にすること - 2009/10/31
建築家 菊竹清訓氏の自邸「スカイハウス」の見学会 - 2009/9/20
オール電化とエコロジーの微妙な関係 - 2009/9/14
ハウスメーカーVS建築家~エコロジー住宅での可能性 - 2009/08/31
中古マンションリフォームのすすめ - 2009/08/08
家づくり~気になるコストのしくみ - 2009/07/07
夏の涼をつくる建築 - 2009/06/08
スペースのはなし - 2009/3/20
家の値段
建築コラム
2009/12/11 日本的なエコロジーとパッシブデザイン~小玉祐一郎氏に聞く環境建築
先日、JIA建築家セミナーで建築家の小玉祐一郎氏をお呼びして講演いただきました。
小玉先生は、25年くらい前から環境共生、パッシブデザインの建築を推奨されてご自身も建築をデザインされて多くの著書も書かれ、活躍されている方です。
パッシブデザインというのは、訳すと受動的なデザインという意味。パッシブというのは、環境からの影響を受け入れるという意味です。風を通す、太陽の熱を土間に集めて暖かくする、打ち水の気化熱で涼しくする、等、日本の文化の中に古くからある快適さを作る知恵の多くはパッシブデザインです。パッシブデザインはCO2を出さない手法ですから、環境にもよくサステナブル。その反対はアクティブデザイン。エアコンを駆使して機械的に快適な室内環境をつくる方法です。
環境意識の高いヨーロッパは、閉鎖型の高断熱・高気密な空間をつくることで、省エネルギーを実現するのがエコロジーだ、という概念がうまれました。そのような環境建築を①閉鎖型と呼びます。
でも、気候風土が違えばエコロジーの考えも方法も違うのです。日本は夏の暑さは熱帯並みで、雨も多く、冬はヨーロッパ並みに寒い。かなり変化の激しい亜熱帯性に近い気候です。そして、緑が豊かで四季の美しいユニークな気候の国です。このような亜熱帯のような気候の地域では、②「選択型」の開いた系をデザインするべき、というのが話のテーマでした。
窓を開けたり閉めたり、かぶせたり、移動したり、さまざまな人間の行為によって成立することで快適さを作り出すことができる、というのが選択型のデザイン。そういうものは数字で効果を測るのが難しいので、今のところマイナーな手法です。
でも、おもしろかったのは、風や光の変化を感じる環境で仕事をすると、知的労働の生産性を高める、といったデータがあるそうです。人の健康や幸福感、知能の発達と、環境とのレスポンスは深い関係にあることがわかっています。
エコロジーには、科学や数字よりも、風土や人、文化的なものに軸を置く考え方があり、日本人のエコロジーは本来そちらのほうにあるべきなのでしょう。アジア全般も同じです。エアコンをがんがんにすることがステータスだった時代は、もうそろそろ終わりにしようという動きが始まっています。
エコロジーのポイントは、「意識の広がりを作り出すデザイン」です。
2009/12/07 子供がいきいき育つ場所~「せいが保育園」見学
今日は、新宿区にある都市型保育園「せいが保育園」の見学に行ってきました。園長の藤森平司氏にご案内いただいて、理念や空間、子供たちの様子を拝見しました。
藤森氏は建築のご出身らしく、ドイツや北欧の幼児教育を学ばれ、日本の幼児教育の問題を指摘してたくさんの本を書かれている有名な方です。子供が自分の力で考え、人とかかわることができるようになるために必要な、保護者や保育士のあり方についてはっきりした理念を持っておられます。
年齢ごとに部屋をわけるのでなく、さまざまな遊びコーナーを用意して子供が「誰と」「どこで」「なにを」するか、自由に選ばせて遊ぶ時間を大切にしておられます。つみきコーナー、絵本コーナー、製作コーナーなど、可動家具でつくられたさまざまなコーナーでおもいおもいに子供が遊びます。ひとりで絵本に熱中する子供、友達と積み木を楽しむ子供、お絵かきをする子供。保母さんや保育士さんの姿はほとんど目に入りません。もちろん、課題保育や一斉保育の時間もありますが、私が見たのはお昼ご飯前の自由時間なのでした。
ユニークなのは「PEACE TABLE」というコーナー。けんかやいざこざがあったら、そこに集まって子供同士話し合って解決する場所、だそうです。「自分のことばで気持ちを伝えよう」と書いてあり、その前に子供が3-4人集まっています。泣いている子供と、冷静に話しを聞く子供、友達の頭をなでるおませな女の子。何を言っているのか、意味はよくわかりませんでしたが、子供同士が緊張感に堪えながらコミュニケーションしている風景に新鮮な感動を覚えました。
PEACE TABLEで話し合う子供たち
もうひとつ、3歳~5歳の年長さんのお昼ご飯。まず、子供たちでテーブルセットをします。綺麗なテーブルクロスと真ん中に生の小さいお花をかざります。厨房から運ばれたご飯をよそう係りの子供が前に立って給仕をします。立派に仕事をする子供たちは、とても生き生きとしていて自信にあふれています。
「安全」と「殺菌」という大人たちの過度な不安によって作られた檻に閉じ込められた現代の子供たち。そこから解き放たれたとき、もって生まれたたくましい身体能力と、自信に満ちたコミュニケーション能力を発達させることができる、という可能性にふれました。ここに来ると、最近問題になっている発達障害の子供が劇的に直ったりするそうです。子供たちは本来とてもたくましい。大人が見方を変えさえすれば、子供は大丈夫なのだ、という希望の光を感じました。
2009/11/06 暗さを大切にすること
昨日は、新しくお会いした若い建て主の方と、いろいろな話をする機会がありました。お仕事で作曲をされている方で、日常的にも小さな音にすごく敏感である、というお話をされていて、聴覚が普通よりも鋭い方なのだろうな、と感じました。その方が、私の建築のコンセプトの「あえて暗い部分をつくる」というのがおもしろい、とおっしゃっていました。
明るいこと、日当たりのよいこと、というのは家づくりでとてもよく出てくる要望です。日本には「南側信奉」のようなものがあって、マンションでも家でも、南向きの部屋が価値が高い、と信じられています。私自身も、「南向き」は好きで、植物を育てたり、猫が昼寝をしたり、といった自分の生活には、お日様は欠かせない、と思っています。
一方で、自分の建築のコンセプトは、「明と暗、その両方を体験できること」を大切にします。一つの家の中に、明るい部屋と暗い部屋を積極的につくることを、一人暮らしの賃貸住宅でも実現するように努力しています。
暗さには「落ち着き」「静けさ」「眠り」「集中」「優雅」など、人間の活動において必要不可欠で、豊かな奥行きを創り出す効果があります。その日お会いした方も「音楽をつくるときに、サビの前に短調の暗い部分をわざと入れたりして、単純に明るいだけの音調にならないよう工夫したりします。建築でも同じことを考えているんですね。」と言われて話がもりあがりました。
この世界には、何でも2極が存在していて、明-暗、静-動、表-裏、上昇-下降 勝-負など、どんなものにも必ず反対のものがあります。そして、人は意識の上で、「どちらがよいか」と考える癖があるようです。でも本当は、どちらか一方を信奉することはとても不自然で、自然の摂理に反しています。裏と表は両方で一つの世界をつくっているので、どっちがよい、ではなく、裏も表も両方いとおしむ、そういう価値観がこれからの時代に必要なのだとろうな、思っています。
2009/10/30 建築家 菊竹清訓氏の自邸「スカイハウス」の見学会
先日の土曜日、世界的な建築家の菊竹清訓氏の自邸、スカイハウスの見学会に行ってきました。50年前に建ったものですが、今みても新しく、明快な空間構成を持った斬新な自邸です。

随所に、日本的美意識と世界に通用する近代メタボリズムの建築の幸せな合致を見ました。菊竹氏が九州の水天宮の御子息であったことも、この建築の寺社風の縁側空間が生まれたことに関係があることを、初めて知りました。
この住宅が建った当初は、家の下が5mのピロティー(軒下外部空間)になっていて、そこで客人を呼んでバーベキューをしたり歓談をしたりされていたようです。当時のビデオを見せていただいて、とてもにぎやかに歓談する風景の中に、今は大御所になられた建築家の方々が数多く映し出されていて、おもわず微笑んでしまいました。
その日、81歳の菊竹先生がいらして、お話を伺うことができました。家について、語っておられたのですが印象的だったのは、「建築は、いつも社会的なものです。たとえ個人の家であっても人を招きいれる座敷がなければその建築は十分でない。日本の家は座敷を失ったときに駄目になった。家には30セットの食器を用意してあるべきなのです。」とおっしゃっていて、実際に長い間そのような生活をされていたことを伺い知る自邸、「スカイハウス」でした。

おもてなし、をするのは奥様や女性達だったのでしょうし、そのような文化をささえた女性たちに深い敬意を表しつます。
社会や人、公共に対して、開かれた意識があるかどうかが、「建築家である」というあり方の根底なのだと認識し、81歳の菊竹氏のお元気な笑顔を見ながら深い感動を覚えました。
2009/09/20 オール電化とエコロジーの微妙な関係
昨今、環境に対する意識が高まっているのは、とてもすばらしいな、と思っています。オバマ大統領の効果も絶大ですね。以前から、環境やエコロジーについて一生懸命考えておられた方もおられると思いますし、私も人一倍エコロジーにコミットがあります。建築において、人と環境にも悪い影響がなく、エネルギーゼロエミッション、さらに自然エネルギーを生産することで、地域生活のエネルギーをすべてまかなえる、そういう未来の建築をつくりたいと夢見ています・・・。 今日は、オール電気とエコロジーについてまじめに考えてみたいと思います。オール電化住宅は給湯器も夜間電力で安くお湯がつくれる、トータルランニングコストはガスより安い、という理論で、なんとなくオール電化は環境に良い?というのは「なんちゃってエコロジー」なお話。まじめな話では、住宅からのCO2の最大発生源は、ガス給湯器といわれています。ガス給湯器から発生するCo2とエコキュートが発生させるCO2は同じお湯に対して約半分ですむからCO2の発生を抑えられる、というお話です。 ところが、私はどうもその辺が腑に落ちないのです。電気というのはそもそも石油や石炭を燃やして熱を電気に変換する過程で大量のCO2を発生しています。さらに電気を発電所から家庭まで運ぶ間に送電中に2/3は消えてしまいます。エコキュートの消費する電気、さらに送電中に失われた電気を作るために発生させたCO2を換算するとどうなのでしょう?深夜電力は安いといいますが、電気を作るために必要な石炭石油の量や発生するCO2の量は同じです。経済を活性化することと環境は、必ずしもパラレルではないのに、環境ビジネスで成功するのがこれからの道、という標語がよく目に付きますね。エコ家電を買いましょう、エコロジー住宅を買いましょう、いろいろと名目上エコロジーを詠っている商品が、本当にエコなのか、きちんと考える時期にきているかもしれません。 風力や太陽光、潮力発電のような電気が大量に作られるような世界になったらもちろんオール電化に軍配が上がりますが、まだまだそのような電力は全体の数%に過ぎません。建築個別に考えるなら、太陽光発電や燃料電池、風力発電を搭載したゼロエミッション住宅ならオール電化にする意味があると思います。電気会社からの深夜電力を大量に使うオール電化は、無駄にしている深夜電力のエネルギーを使うという意味があるのでしょうがで、本質的にはエコではないと思います。 給湯器の問題を解決するのには、昔ながらの太陽熱温水器が一番効率がよいでしょう。太陽の熱をできるだけダイレクトに利用して暖房に使うOMソーラーも意味かなりすごいと思います。太陽のエネルギーを直接利用して、送電線からの電力消費量を抑えることがエコロジーなのは間違いないでしょう!
2009/09/14 ハウスメーカーVS建築家~エコロジー住宅での可能性
先日、ハウスメーカーで長年設計に携わっておられるS氏とお茶を飲みながらざっくばらんな話しをする機会があり、いろいろ考えさせられました。ハウスメーカーと建築家の違いや長所、短所について、あらためて考えてみました。
最近の環境への意識の高まりに加えて、長期優良住宅制度の開始など、わかりやすい宣伝文句が広がって、どのハウスメーカーも主力商品としての長期優良住宅+エコ住宅を売りに出しています。太陽電池や、さまざまな付加機能もついたゼロCO2住宅が2500万円台とか、この価格でこんな家が買えるのか、と思うと、敵陣ながらあっぱれ、と思ってしまいます。
圧倒的な着工数を誇る大手ハウスメーカーは、買い手にとって、コンセプトや価格が明快で、できあがったものもモデルルームでイメージできるし、品質も安心できそう、という感覚は、大きな買い物だけに安心感を与えてくれます。・・・とはいえ、多くの場合、実際に建てられるものは、予算も土地も、設計も、モデルルームとは違います。契約前に「間取り」を決めて契約を取るシステムのため、担当の設計士や営業マンが短時間に、お客様の要望をできるだけ満たして図面をつくる、いわゆる「間取り設計」になっています。家づくりの一番大事な「肝」である設計には、時間とエネルギーを使えないシステムです。もちろん、メーカーごとの決まりごとがあって、自由な設計ができないというしばりもあるでしょう。そして、設計料という名前ではお金は取れないものの、広告費や営業経費、モデルルーム代などの固定費が、購入価格のなかの3~4割程度含まれているというのがハウスメーカーの実態のようです。
また、メーカーに相談に来る人のなかで、建築家のつくるユニークで「空間」のある家に住みたいという、目の肥えた住まい手が多くなっているとS氏。メーカーは品質には信頼をもたれているようだが、設計に対して自由度が低いという難点、設計者一人で年間数百棟設計しないといけない、という現実があって時間に制限がある。そこのあたりで、もうちょっとなんとかできないか?ということで試行錯誤されている印象をうけました。
自分としてもエコロジーな家づくりにはコミットがあります。でも、エコロジーな家づくり、といったときに、イコール太陽電池、緑化屋根などのエコ設備を装備しても、そこに住む人の体験として何も変化していなかったら、本当の意味でエコロジーな生活は生まれないと思ってしまいます。
暮らしの中で、空や緑、風のにおいなど、自然を感じるような瞬間の多い空間、夏はほとんどエアコンなしでも暮らせる、冬は、足元から暖かい輻射熱暖房などでエアコンなしで快適。ちょっと手間がかかっても庭に植物を育てたり、無垢の木をオイルで磨いたりしてみてはと思う、自然や環境に向かって意識がひらかれてくる家づくり、というのが私の考えるエコロジー住宅です。もちろん、太陽電池も燃料電池も、経済的に余裕のある家庭なら大いにつけてほしいですし、そのためのサポートもしたいと思っています。でも、最初に考えることは、家の性能としてきちんとした断熱性、通風、直射日光の制御、空間の快適さ、それらの基本的なことをクリアするのは、敷地の条件、周辺環境を配慮した設計をすることです。その上で、そこに住む人の幸せな暮らしに必要なものの優先順位をつけながら、無駄なものを省き、目に見えない基本性能や、人の体験に影響を与える部分にお金をかける、それらの知恵に対する対価として、設計の意味や価値への理解が広がってほしいと思います。
中古マンションリフォームのすすめ~2倍の広さを感じる空間デザイン
都心に住みたい、でも家賃は高いし一戸建てはちょっと手が出ない、という方、中古マンションはうまく選べば満足度はかなり大きいです。面積がちょっと狭くても、建築家に依頼してリフォームすることで広さが2倍に感じられたり、十分な収納も取れたりする方法があります。
その前に、マンション購入のチェックポイント
1. 耐震性について 竣工が1981年以前のものは、耐震基準がゆるいので、できるだけそれ以降のものを選ぶようにする。(新耐震以降)
2. 管理体制がしっかりしていること。12~15年おきに大規模修繕計画がされていること。管理人さんが掃除やメンテナンスをきちっと行っていることもチェック。全体戸数が少ないと管理費が高くなるので注意。
3. 立地環境チェック。駅からの経路や近所にあるものなどチェック
4. バルコニーは共用部で費用がかからないのに、自分の領域のように使いこなすことができるので、こういうものがついているとお徳感があります。
5. 遮音対策についても確認。
6. そのほか、日当たり、眺望、風通しなど自分のこだわりポイントを明確にして、
業者がリフォームする前のものを安く手に入れたい旨、不動産屋さんに依頼しておく。
以上の項目をできるだけ満たすような物件を探して見ましょう。その上で、面積2倍に感じる目から鱗の広々したリフォーム術。
1. 自分の大切にする生活は何かを明確にする。友人を呼ぶことのできるリビングダイニング、ガーデニングテラスを楽しむ、食べることを楽しむ、充実した書斎空間をつくる、リラックスできる映像空間をつくる、浴室を広がりを持たせて、等等。
2. 小さい空間と大きい空間のメリハリをつける。空間を立体的に利用する方法を考えると面積が2倍に感じられる家も可能です。
3. 収納スペースをきちんと確保する。収納スペースは、家具屋さんよりも、大工さんに壁をつくってもらって、建具屋さんに扉をつけてもらうほうがコストが抑えられ、大容量の収納が可能です。
こんなふうに自由にリフォームできる、中古マンションの魅力、いかがですか? 
2009/08/08 家作り~気になるコストのしくみ
建築のコストについて、今日は少し考えてみます。家づくりの見積もりは、ハウスメーカーだと、坪単価でベース仕様が決まっていて、何か要望や追加事項があるとそれにどんどん見積をプラスしていく、という方式を取っているようです。ですから、ハウスメーカーの図面は、申請用の最低限平面、断面、立面の数枚の図面で工事費の契約をすることになります。
一方、設計事務所が設計する家は、まず設計士がお客様の要望をもとに図面を作成し、細かい仕上げや構造、設備の仕様などすべてを決めた上で工務店に見積もりを取ります。相見積りといって、何社かの工務店に見積もりを取りますが、このとき、工務店は設計図にあるものをすべて数量で拾って、それに単価をかけて、積み上げ式で明細見積もりをつくります。この単価をかけるときに、よくあることしては、工務店の担当者がおよそこんなもんだろう、というような勘で金額を入れて、契約を取るために、ちょっと抑えた価格にしておこう、とか、ここは少しお金がかかりそうだから高めに、とか、微妙にさじ加減を加えながら金額を入れてしまうことです。この見積もりを、設計士が数量や項目についてチェックし、間違いを指摘したり、価格の査定を行ったりして承認します。最後は工務店同士の価格競争の中で「値引き」が発生したりして契約金額が決まり、工務店と建て主の方とが契約を結びます。
契約書には、設計事務所が書いた50枚以上の図面に加え、工務店の明細見積もりが添付されます。その意味は、この契約金額で、この図面にある内容をすべて含んだ家をつくります、という約束です。万が一見積もりに間違いがあって見積もりに入っていなかった、あるいは金額が予想よりも高かった、という事態があっても、図面にある以上、工務店が負担してきちんとそれを工事してもらう権利を持つ、という意味です。逆に、契約後、見積もりに余分に入っていた項目がある場合、それは値引きしてもらえるか、というところはケースバイケースといったところ。あきらかに余分なものが発見された場合は値引きしてもらえますが、数量が多かった、とか単価が高いのでは、といったことは指摘してしまうと、(こういうことのないよう、契約前に十分チェックしたはずなのですが、それでもたまにはそういう箇所が出てきます)今度は工務店から、こっちの項目が抜けていた、下請けから出てきた見積もりが高かった、ということで実際にはこんなに予算オーバーなんです、という内情の説明が始まり、収集するのが難しくなったりします。
基本的に契約見積というのは、工務店の責任ということになっていて後からつべこべ言えない仕組みになっています。ですから、設計時の仕様を落とすことなく、契約金額内で良い仕事をしてもらうことを第一とし、よほどのがない限り、契約見積もりの変更を行わないことにしています。そのためにときには、工務店の窮状を救う知恵を出しながら進めていく、という業務が発生したりします。とはいえ、設計士としては、できるだけよいものを契約金額内で、という職能的欲望がありますので、工務店にお願いしたり駆け引きしたりしながら、完成するまで現場でも粘り強く建築に意図とエネルギーを注ぎ込む、というのも現場監理の醍醐味です。
最近の建築業界の不況のあおりを受け、工務店の儲け分というのがどんどん減っていて、ぎりぎりで受注しているケースも多いと感じます。そういう状況でも丁寧に誠実な工事をしてくれるように、設計士がこまめにチェックしたり応援したりすること、工務店と二人三脚のような関係で、パートナーシップを組む必要があるな、と感じます。
建設業界の価格の透明性、というのは大切な課題ですし、設計事務所が入ることで、すべての材料、工賃の価格の内訳がわかって契約できるのですが、実際の現場での価格に関してはどうしても一致しないことがあり、本当に全部透明にするのはまだ困難が多いと感じます。
2009/07/07 夏の涼をつくる建築
建てこんだ住宅地で、夏の涼しさを実現する方法はあるでしょうか?
南も東も西も、四方に住宅が近接して建っている場合、通風を確保するのは簡単ではありません。
まず、できるだけボリュームを出して、吹き抜けをつくること。吹き抜けの上部に、風抜きのための煙突のようなトップライトや階段室など、他の屋根より一段飛び出した風の塔をつくることは、家の中に風を呼び込む上でとっても有効です。
これは、自分が設計した千駄木の家の断面です。中心に階段室を設け、その上部に屋上テラスへ抜ける風抜き窓を設けます。家の屋根の上部を吹く卓越風が屋根の上を走るとき、高い部分に空いた窓のまわりに負圧ができ、室内の空気をオーバーフローさせる力になります。
その結果、下部の部屋の窓から風を引き込み、体感できる風をつくることができます。夏の風の流れを考え、オーバーフロー効果を作る窓を配置して、部屋の下のほうのも窓をつくり、家全体に風が流れるように開口部をコントロールすると、エアコンがなくても風を感じる住宅をつくることができます。
その上で、 屋根の断熱は2重に行い、壁の断熱も十分に行うこと。千駄木の家の屋根、フェノール系断熱材30mmの24kのグラスウールを100mm敷設しています。
24kのグラスウール100mmの写真 袋を開くと150mmはあります。
高断熱で、風の道をつくること、あとはダイレクトな直射日光を入らないようにすることで、夏の涼のある家をつくることができます。
2009/06/08 スペースのはなし
スペースって何でしょう。日本語では空間。設計では、よく空間をデザインする、という言葉を使います。しかし、空間というのはあいまいな言葉です。何もない(空)間にあるものです。空間には建築が作る空間と、人がつくる空間、物がつくる空間、あるいは気配のようなもの、いろいろあります。そして、もうひとつ「場」という言葉も自分はよく使います。
空間は部屋のように、壁や天井がある固いもので規定された場所のようなイメージがあります。場所、というと床や地面など、人が立つ大地みたいなものがあって、そのまわりにぼわーんと広がる空気、気配みたいなものを指して、「場」をつくる、というイメージで考えます。場をつくることと空間をつくることは似ていますが、ちょっと違う。
空間は、大きさがあって物質によって規定される意味が強いと思います。物質に寄っている、というイメージです。「場」は、そこにいる人、感じていること、雰囲気、そこにあるさまざまな環境要素、物質以外のその場にある目に見えない質をもった、空気のように背景に広がる何か、です。
場は密度があり、人の感情も場をつくります。
強い感情を持った人のそばにいると、何か影響を受けます。良い感情には癒されるし、その反対の場合もあります。
人はとても繊細で、目に見えないエネルギーを感じ取る力があるのだと思います。そして、建築家によって強く意図された空間には、強い場の力が働きます。たくさんの建築を見てきましたが、本当にすばらしい建築には、圧倒的に場の力が発生します。
スペースという言葉は、「空間」と「場」という意味、両方の意味をあいまいに包含できる便利な英語だと思います。私は空間をつくるときに、その場所に発生する「場」についていつも考えます。人がリラックスして心が開放されるような「場」のデザイン、なじんだ日常の感覚から少しだけシフトするような、感覚を目覚めさせるような場のデザイン。そのような空間を創ることが私の仕事です。
2009/3/20 家の値段
建築は、よく大きさを面積や坪数であらわします。
家の販売価格は面積は何坪で何千万というような、坪単価、面積で買い物感覚で建築を判断するところがあります。価格や面積といった数字は客観性があって、ある意味、信頼できる情報です。それに加えてLDKというような間取りもあわせればほぼ必要な情報が満たされている、と人は感じてしまいます。
でも、本当には建築、家はとくに、面積や坪単価で価値を測るものではないですよね。その家がどんな土地に建っているか、見晴らしはどうか、日当たりはどうか、風通しは?どんな生活を想定して設計されたのか、住む人の個性についてどれだけ考えられているのか、素材はどうか、構造材は、基礎はどうなっているか?さらに、その素材が流通している経路、建設工事に携わった人がどのような態度やどのような環境でつくったか、そういうことまで建築に大きく影響してきます。
そして、目に見えない人の気持ちは、必ずしも高値がつくものではありません。
この資本主義社会では、お金は、物質的なものの数値に対応しますから、面積や材料価格などでほぼ価格は決まります。でも、そこにかけられた目に見えない意図やアイデアは、設計すること、という目に見えない力でその場所を形作るのです。 良い建築をつくることは、本当にいろいろなことをクリアしていく必要があります。そして、コストも大切ですし、それ以上に、長く使われて、そこに暮らす人を幸せに、健康に、そして創造性をはぐくむような建築をつくりたいと考えています。
田口知子建築設計事務所 〒106-0041 東京都港区麻布台1-5-6-702 電話03-5545-5936







