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コラム

田口知子のブログ

2020.04.17

多摩産材の杉材を使うこと

私達が設計監理を進めております「みみみの森プロジェクト」に建つ集合住宅は、昨日、工事会社と建て主様とで、無事工事請負契約を締結されました。600㎡程度の木造集合住宅ですが、今回、構造部に可能な限り、多摩産材の杉製材を使うことにしました。

敷地の現状:母屋解体がほぼ完了

「みみみの森プロジェクト」は「地域へ貢献する、まちをつくる建築」、というテーマで進められているプロジェクトです。
その地域で生産される森林資源、農産物などを積極的に使って、それに付加価値をつけていくことは、地域の文化をはぐくみ、さまざまな技術、資源を存続させることになります。外材に比べてコストが高いと言われる県産材ですが、製材として使える杉材は、植林から50年以上たち、製材として十分なサイズになっているにもかかわらず、使われずに日本にあふれています。
秩父の金子製材の金子氏いわく「大きく育った木を製材として使うことは、そこまでの大きな木を育て、伐採して使うという、山の文化を守ることになる。」とおっしゃっていました。その土地にあった森の育て方、伐採方法、乾燥方法など、木造の建材をうまく利用する深い知恵をお聞きすることができました。
どんな地域にも、その地域の宝ともいえる地域産材があります。そのような材木が50年も経って巨木になって日本に大量に余っています。安い外材との価格競争というハードルがありますが、国連の提唱するSDGs「持続可能な開発目標」としても提唱されていますが、地域の資源を守る、資源を維持し、循環させる産業を守る、ということは、人も自然も幸せにする未来をつくります。
建築を設計する川下の私たちが、川上の生産者の人たちとつながることができれば、大切な大きな目標に向かって進んでいける可能性があると感じます。
 実際「みみみの森プロジェクト」で、構造材の大部分を多摩産材に変更したところ、コストの差はそれほど大きくはなく、十分に実現可能なレベルだということを知りました。  材料の選定において、生産者の方の声を聴き山の持続可能性まで含め、材料を選択していくことができれば、建築は新たな役割を担うことができるのだな、とあらためて感じています。