古くからこの地に住まわれていたMさんは、2人のお子様を育てるシングルマザーです。学童保育士をされているＭさんがプロジェクト融資を受け家を建てることは大きな挑戦でした。隣地に女子大があり、昼間は学生の元気な声が聞こえます。大学構内の樹木が借景として朝の光を取り入れられる住まいは、コンパクトながら明るく、快適な生活空間を実現するよう、内部空間の在り方を考えました。近年の建設費高騰の影響で工事費を抑えながら、３世帯の水回りを配置し断熱や明るさを損なわず、健康な住まいを実現することを目標としています。工事費を抑えるために、建築の外形をできるだけシンプルにすること、Mさんの住まいは階高を抑えつつ、南向きの広めのＬＤＫを確保し、２世帯の家族が集まることのできる空間を意図しました。家族５人皆が個室を持ちつつ、共用の玄関、明るい浴室、吹き抜けのあるリビングなど、面積以上の広がりを感じられるメリハリのある空間を目指しました。窓からの緑と空を感じられる風景を楽しむ住まいです。賃貸は寝室を１階から２階につながるメゾネットになっており、南北に風が抜ける立体的な空間になるよう工夫しました。
賃貸付きの２世帯住宅は、この家に住む人の暮らしの安心をつくり、家族や友人の集まる住まいとして、これから末永く愛され、育まれていくことを願っています。（田口知子）