Works

作品実例

千駄木の家

千駄木の家

千駄木の家

 

① 自然を楽しむ・涼のある家~土間と中庭がつくるパッシブデザイン 建て込んだ住宅街の中で、光と風や緑など自然を感じる家を作るにはどうすればよいのだろうか。南北に長く北側道路を持つこの土地の特徴を考えた結果、まず最初に中庭を作り、南北二つのボリュームに分かれた家をデザインすることにした。中庭は3m四方の小さな半日陰空間であるが、緑の豊かな涼やかな雰囲気を作り出し、どの部屋からも中庭の緑を臨むことができる。中庭は高木と地被類を混植し、水蒸気の放熱発散によって家の中に涼風を引き入れる効果が期待できる。 また、1階に広めの土間空間を設けている。土間は比熱が大きく蓄熱効果がある。地中深く断熱材を施すことにより、地熱を利用した蓄熱体となることが期待できるので、夏は涼しく冬は暖かい快適な土間空間を実現する。中庭と土間、風のデザインなどが合わさって、パッシブデザインの自然住宅を作り出している。

 

② 風のデザイン~風の道と吹き抜けが風を作り出す。 南側も東西も間近に家が建て込んでいる環境の中で、風通しの良さを実現することを考えた。風には、季節で変化する大きな卓越風の流れと、付近の地形や植生から発生する微気候の風が存在する。それらを両方ともうまく取り入れながら、部屋の中を風が吹き抜けるような断面形状を提案する。 夏の卓越風は南西からの風がメインになる。屋根の上を走る卓越風を捉えて北側の壁の最上部に風抜き窓を設置する。ダイニングの吹き抜け効果も相まって、上昇気流と負圧の効果で北側上部から空気が吐き出されると同時に、それを補うように中庭や階段室を通って風が部屋の中に引き込まれる。 また、北側道路が微気候での風の道になっていることを利用して、玄関を格子戸でつくり、土間から風を引き込んで階段室を通って屋上に抜けるような風の道を作った。階段室の吹き抜けは常時風抜き窓を開けておくことができるように窓の形状をデザインし、温まった空気が自然と排出されて土間からの空気を循環させている。二つの大きな風抜き窓によって、中庭や道路、隣地側からも自然な風が引き込まれ、風通しの良い家を実現できると考えている。

③ それぞれの居場所とつながりのデザイン 家族3人がおのおの自分の居場所を持ちつつ、お互いの気配を感じられる連続した空間をつくりたいと考えた。居場所として感じられるようなコーナーをたくさん作ること、それらがレベル差や中庭、吹き抜けを介してゆるやかに繋がっている。特に1階のプレールームは子供の遊び場としても、旦那様が夜くつろぐためのスペースとしても、また近所の人とおしゃべりを楽しむ奥様の井戸端会議場としても使える。家族のつながりだけでなく、パブリックな人や自然とのつながりを感じられる空間が、この家に居心地の良い奥行きと開放感を感じさせてくれると考えている。

DATA

建設地:
東京都文京区
構造設計:
平岡建築構造事務所
構造:
木造
用途:
住宅
施工:
山崎工務店
竣工:
2009年10月
撮影:
ナカサアンドパートナーズ
敷地面積:
94.65㎡
延床面積:
106.65㎡